日産、エンジンに100億円投資 精密部品を国内で集中生産
日産自動車は2023年度までに精密加工が必要なエンジン部品を国内4工場で集中生産し、国内外に供給する体制を整備する。投資額は100億円超とみられる。可変圧縮比(VCR)エンジン向けの部品で高い加工精度が必要なため、技術に優れる国内での生産が欠かせないと判断した。同エンジンは独自のハイブリッド車(HV)技術「eパワー」でも採用。世界でeパワー車を拡販する同社の電動車戦略を日本のモノづくりで支える。
横浜工場、いわき工場、栃木工場、日産工機の4工場でVCRエンジン向け精密加工部品を分担して製造する。熱処理、鍛造、切削といった加工設備を各工場に導入。一部で生産を始めており、生産量に応じて能力を順次広げる。
日産は18年に世界で初めて排気量2000ccの量産型VCRエンジンを実用化した。走行状況に応じてエンジンの圧縮比を変えられ、低燃費と力強い走りを両立できる。新たにeパワーでの活用を想定した同1500ccのVCRエンジンを開発。22年に欧州で同エンジンを搭載したeパワー仕様のHVを投入するなど国内外でVCRエンジン搭載車の積極展開を計画する。
一方、VCRエンジンは主要部品に高い精度、強度、硬度を実現する難しい加工が求められる。日産は加工技術や品質管理に優れる国内工場で、難加工が必要な精密部品を集中して生産。これを国内外のエンジン組立工場に供給し、需要拡大に応える。
日産は30年代の早期に主要市場で販売する新型車をすべてeパワー搭載のHVや電気自動車(EV)などの電動車に切り替える方針。23年度では世界で年100万台以上の電動車販売を目指す。
アーサー・ディ・リトル・ジャパン(東京都港区)によると、30年に世界で生産される乗用車のHV比率は20年の10%から36%に向上。EV比率は同15%にとどまり、HVの存在感が高まる見通し。