タングステン調達で総力戦 高騰止まらず超硬工具危機
超硬工具の原料であるタングステンは、世界生産の約8割を握る中国の輸出規制で需給が逼迫(ひっぱく)している。中東情勢などもあって国際相場が高騰する中、国内の工具メーカーは価格転嫁すべく6月受注分からの値上げを発表。併せて、原料を十分に確保できないため供給を制限する動きがある。中長期的には、使用済み工具からの資源の回収・再生、国内での有効活用をめぐって国を挙げた取り組みが必要になっている。
「今回のタングステン危機は(尖閣問題による時とは)次元が違って輸出規制の相手は世界各国。これが長引くと、日本でクルマも半導体も作れなくなってしまう」。超硬工具の再研削などを手がけるマイスターの高井作会長はこう訴える。
タングステンはレアメタル(希少金属)の一つで、ダイヤモンドに次ぐ硬度と高い耐摩耗性、耐熱膨張性などが特徴だ。タングステンが主成分の超硬合金を用いた超硬工具は、自動車、航空機、半導体関連の部品の切削加工などで広く利用されている。タングステンは砲弾をはじめとする軍需にも欠かせない。
最大の生産国である中国は2025年2月から輸出を規制し、26年1月からはデュアルユース(軍民両用)品目として規制を強化した。日本は十数年前、尖閣問題に伴う輸出規制に見舞われたが、今回は関税をめぐる米国との対立でリスクが高まった。
中間原料であるパラタングステン酸アンモニウム(APT)の国際相場は足元で、約1年前の7倍に跳ね上がった。26年の年明けからは3倍と上昇幅が大きい。日本は中国から比較的安価に調達してきたが、中国依存のツケが噴き出している。
工具各社は、超硬製品について6月1日受注分からの値上げを打ち出した。三菱マテリアルは国内向けの超硬ドリル・エンドミルで従来比20%以上、超硬素材(ロウ付けバイト用など)で3倍以上引き上げる。
住友電気工業は値上げ幅を超硬インサートで13%以上、ソリッドドリル・エンドミル製品で60%以上、ロウ付けバイト製品で20%以上とした。
タンガロイは、超硬シャンクを5―18%、超硬エンドミル・ドリルを10%以上、刃先交換インサートを8・5―11%値上げする。
オーエスジーは25年12月1日からの受注分について超硬エンドミル・ドリルなどを7%値上げしたほか、MOLDINOは26年2月2日受注分から超硬エンドミル、ドリル、インサートなどを10%以上引き上げた。いずれの企業もタングステンなどの高騰分について、生産の最適化、コスト削減など内部努力だけでは吸収しきれないと判断したものだ。メーカーによってはここ約1年で、再値上げを表明したところもある。
世界的にタングステンの需要が供給を上回る状況下、各社は顧客に供給制限への理解を求めている。
MOLDINOはホームページに「超硬製品の受注制限について」と題する文書を出した。「原材料の安定的な調達の見通しを立てることが困難」で、製品の安定供給と品質維持のため「弊社予想を超える受注、新規受注の制限、または停止」を実施していく。
三菱マテリアルの子会社、日本新金属はタングステン製品について、4月1日以降の出荷分から「25年度実績の約80%を目安に受注数量を制限」している。
自動車駆動系部品向けが主力の富士精工は、超硬のドリルやリーマなど、連結売上高の約30%を占める製品で素材調達逼迫の影響が懸念されるという。同社はタングステンをパウダーでなく、ある程度の工具形状に焼結した超硬合金として素材メーカーから仕入れている。その在庫が逼迫し、代替調達ルートの確保に奔走している。
タングステンの細る供給力を補う意味で欠かせないのが、超硬工具のリサイクルだ。かねて日本では循環経済の流れを確実にしようと地道に取り組み、国内超硬工具業界での使用済み工具の回収率は現状5割とみられる。回収スキームさえしっかり構築すれば回収率アップが期待できるが、鉄くずなどと一緒に溶解されたり、高値で買い取る中国などに流出したりといった課題が指摘されている。
機械工具工業会の佐橋会長は「リサイクルの重要性を顧客に広く知らせ、回収しやすい流れを作ることが大事だ」と説く
工具メーカーなどで構成する日本機械工具工業会の佐橋稔之会長(住友電工常務)は「政府の力を借りて海外に流出するタングステンをいかに減らせるか。業界が一つとなって、リサイクルの重要性を顧客に広く知らせ、回収しやすい流れを作ることが大事だ」と説く。経済産業省は経済安全保障の観点を踏まえ、工業会メンバーらへのヒアリングを重ね、今後何らかの支援策を講じる考えだ。
住友電工は約159億円を投じ28年に富山市でタングステンの新工場を稼働し、生産能力を現状比5割高める。タングステンリサイクルなどを手がける子会社のアライドマテリアルが、同社の富山製作所近隣で新工場を建てる。投資額の半分は経産省の「経済安全保障推進法に係る重要鉱物助成金」を充てる計画だ。
同富山製作所は25年に、使用済み超硬工具などから回収したタングステンスクラップを精錬した三酸化タングステンの製造能力を従来比約3割増強済み。今回の投資では工具に使えるよう、後工程である三酸化タングステンの還元・炭化の能力を高め、リサイクル能力全体を底上げする。
三菱マテはアジア・欧・米の3極で、工具向けタングステンのリサイクルを強化している。25年秋に再設定した中期経営戦略で、30年度のリサイクル原料使用率の目標を従来の80%から100%に引き上げた。現在の同使用率は60%を超すが、目標までの開きを早期に埋める。
このため子会社の日本新金属の秋田市にある工場、三菱マテ傘下のエイチ・シー・シュタルク・ホールディングス(HCS)のドイツ拠点でともにスクラップ処理量を従来比数十%高める。投資時期は未定だが、専用ヤードや処理装置などを拡充する。リサイクル拡大の余地が大きい米国では、三菱マテ米法人にある資源循環事業部がHCSと連携し、強化策を検討している。
日本機械工具工業会はタングステンの調達リスクを回避するため、超硬工具スクラップのリサイクル促進ガイドライン(指針)を改訂し、近く公表する。ガイドラインは12年に発行され、18年に一部見直されたが、今回①レアメタル確保に向けた政府の施策②リサイクルの現状③リサイクル窓口の事業者一覧―などの項目を改訂。最適な分別・回収方法、国内還流ルートへのスクラップの集約についても言及する。
工具業界が対応を迫られるのは、バージン原料の品不足だけではない。ある企業トップは「原料と同様、スクラップの価格がとんでもなく高騰している」とこぼす。中国が世界から高値で買い集め、単価がどんどん上がっている状況だからだ。
スクラップ業者がかなり高い値段で回収しており「国益を考え外に出さないモラルを重視するか、足元の日銭を得るかの究極の選択。このままだと将来、工具が作れなくなることを顧客にどう伝えていくかが悩みどころだ」(企業のトップ)。
タングステンの調達は、いつになったら先行きの見通しが立つのか。製品の安定供給と品質の確保に向け工具業界の取り組みは持久戦になりそうだ。マイスターの高井会長は「各社の努力に加え、使用済み刃具の再研削やハイス(高速度鋼)工具への一部代替、新たな資源採掘の模索など総合力で臨む必要がある」と話している。
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- 2026年4月16日
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トライアル トライアル>丸物の極小部品測定 小型バイス
トライアルは丸物の極小部品をV字型の溝部分に挟み、立てた状態で測定できる小型バイスを発売しました。
直径0・85ミリ―6ミリメートルの丸物部品に対し、大きさに応じた汎用3タイプを用意。受託加工を手がける同社内で実証した製品で、丸物部品以外の異形状部品の測定やオーダーメードも可能。測定用途以外にも組み立てやマシンバイスとしても使えます。ステンレス製で、サイズは30ミリ×20ミリ×15ミリメートル。 -
- 2026年4月8日
ソディックとC&Gシステムズは形彫り放電加工工程の情報を一元管理する統合生産システム「AIQ―MfgSemiAuto」を発売しました。
2次元コード(QRコード)で放電加工用の電極の加工から放電加工までの情報を管理することで段取り作業の削減などを実現し、生産性と品質の向上に貢献します。
設計工程でCAD/CAMを使って電極用の加工情報を作成しデータベースに登録。 -
- 2026年3月31日
日進工具は切削性と耐欠損性を高めた立方晶窒化ホウ素(CBN)スーパースパイラルボールエンドミル「SSPB220」に8サイズを投入。
既存品と合わせ全38サイズ。
外周刃が加工面に接触すると切削負荷からびびり振動が発生して工具寿命や加工面品位に影響を及ぼすが大きなバックテーパ形状を採用し悪影響を軽減します。 -
- 2026年3月13日
MOLDINOはアルファ高送りラジアスミルシリーズで炭素鋼や合金鋼の切削に適した新インサート材種「JS4160」を追加発売しました。
粘り強さと耐熱性を両立させた超硬母材、耐熱性と耐溶着性に優れたコーティング膜を採用することで高能率加工時に長寿命化を実現。
適用商品は同ラジアスミルTR2F用と同TD4N用が各2アイテム、同ASR多刃タイプ用が4アイテム。 -
- 2026年3月10日
三菱マテリアルは底刃枝穴クーラントホールによって3次元自由曲面加工の切りくず排出性を高めるテーパラジアスヘッド「iMX―C8T/C10T/C12T/C15T―E」を発売しました。
枝穴ホールを通じて被削材の傾き時にクーラントを円滑に吐出するため、切りくずを安定的に排出して工具寿命を高められます。
5軸加工機を使用して傾斜させることで、疑似的に大きな曲げ半径(大R)でブレードなどを加工し、良好な加工面粗さを実現可能。
同ヘッドは、同社のヘッド交換式エンドミル「iMXエンドミルシリーズ」に追加投入。
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