工作機械 10年ぶり1兆円割れ
2020年の工作機械業界は、米中対立と新型コロナウイルスの二重苦に直面した。19年から続く米中貿易摩擦による受注低迷に加え、新型コロナの感染拡大で一段と市況が悪化。年間の受注高は10年ぶりに1兆円を割り込む見通しだ。
「設備投資に対する慎重姿勢は依然根強い」。日本工作機械工業会の飯村幸生会長は9月の定例会見で設備投資の冷え込みぶりをこう説明した上で、年間受注見通しを年初公表の1兆2000億円から8500億円に修正した。新型コロナの感染拡大に伴い、主要国での経済活動停滞や移動制限、顧客の設備投資先送りが発生した影響などを折り込んだ。
実際、1―10月の間の単月受注額で、好不調の分かれ目と言われる1000億円を上回った月は一度もない。5月には512億円と10年6カ月ぶりに550億円を割り込んだ。
ただ、その後の経済活動の再開を受け、受注に回復の兆しが見られている。特に中国がけん引役となり、6月以降は受注額の前年同月比減少幅の縮小が継続。日本やインド、米国など中国以外の国でも持ち直しの動きが強まってきている。
21年も、新型コロナの感染再拡大や米中関係などのリスク要因が引き続きくすぶるものの、受注環境は緩やかな回復の流れがおおむね持続しそうだ。
そうした中で主要メーカーでは、製品出荷前の立ち会い検査や製品のPR、商談活動などにデジタル技術を活用する動きが広がる。DMG森精機の森雅彦社長は「デジタルによって、顧客とかなりの部分までつながれるようになった」と手応えを示す。
製造業は以前からの自動化・省人化ニーズに加えて、作業者の衛生に配慮した設備環境の構築やデジタル変革(DX)の推進など多くのテーマを抱えている。21年は工作機械メーカーにとって、こうした潜在需要をいかに喚起し、デジタルも駆使しながら受注を積み上げられるかが試される1年となりそうだ。