国内2輪車メーカー苦境 販売戦略、環境変化に対応
国内2輪車メーカーが苦境に立たされている。各国の実情に合わせて商品投入するが、新型コロナウイルス感染症問題で販売が大きく落ち込む。電動化対応や新興メーカーとの競争も激化する。川崎重工業が2021年10月をめどに2輪車事業などを分社化し、経営の意思決定のスピードを高める計画を発表した。各社も環境変化に応じた販売戦略の見直しを迫られる可能性がある。
川重は20年4―6月期の世界販売が、前年同期比45・5%減の5万4000台と大きく落とした。主要市場である欧米や東南アジアの市場で新型コロナの影響が出ている。新興国向けの2輪車の減少なども収益を悪化させた。20年7―9月期は同27・8%減の9万1000台と減少幅は縮小するが、21年3月期はマイナスになる見込みだ。
事業方針説明会で橋本康彦社長は2輪車事業の分社化について「当社で唯一の量産型コンシューマービジネス。意思決定のスピードを高める」と説明する。これまでは“親会社”と“子会社”のような関係だったが、分社化でより消費者に密着した製品・サービスの提供を目指す考えだ。
2輪各社は各国の実情に合わせ、迅速な販売戦略が求められる。高価格帯で趣味性の高い2輪車は、日本や欧州などの先進国での需要が高い。
一方、アジアなど新興国では安価な移動手段としての役割がある。経済成長とともに排気量が大きく価格も高いモデルに需要がシフトするため、需要をくみ取ったきめ細かい商品設計が求められる。また環境対応などで電動2輪車の開発にも迫られ、コスト負担が課題となる。中国や台湾、インドなど新興メーカーの台頭も懸念される。
世界最大手のホンダも20年4―6月期の世界販売は中国を除くアジアを中心に販売台数が減少し、同62・3%減の185万5000台だった。中国や米国では前年実績を上回る見込みだが、21年3月期通期見通しは同23・5%減の1480万台と大きく落とす。
ヤマハ発動機は新興国と先進国の2輪車事業ともに苦戦する。アジアを中心にロックダウン(都市封鎖)の影響があり販売台数が大幅に減少している。
スズキは20年4―6月期の世界販売が北米や中国を除き各国で前年割れとなっている。特にインドが同68・7%減の5万4000台、欧州も同32・8%減の1万台など販売が減少する。
世界の2輪車市場が大きく落ち込む中、競争力をいかに維持するか。各社の手腕が試される。