工作機械 需要拡大局面続く メーカー相次ぐ上方修正
製造業の旺盛な設備投資を背景に工作機械の需要拡大が続いている。海外、そして国内の自動車や半導体向けがけん引し、2017年の受注総額は過去最高に迫る勢いだ。想定を上回る市況の良さに工作機械メーカーは相次いで2017年度通期業績見通しを上方修正しており、拡大局面は当面続きそうだ。
日本工作機械工業会が発表した10月の工作機械受注は前年同期比49.9%増の1406億8600万円で、10月の最高額となった。好況の指標とされる1000億円超えは昨年11月から12ヵ月連続。2017年1〜10月の累計は1兆3211億8100万円で、残り2ヵ月も今のペースが続くと過去最高の07年1兆5899億9100万円に迫る。
好調な受注環境を受け日工会は9月、年間受注総額の上方修正を発表。修正予想は年初公表の1兆3500億円より2000億円多い1兆5500億円。飯村幸生会長(東芝機械会長)は記者会見で「中国のEMS(電子機器の製造受託サービス)関連向けは弱含む可能性もあるが、裾野の広い一般機械が堅調で今の水準を維持する」と語った。
背景にあるのは海外国内両輪の活発な設備投資意欲だ。受注総額の約60%を占める外需は欧米や中国の自動車、スマートフォン部品向けなどが回復。10月受注は前年同期比59.8%増の839億6300万円で、11ヵ月連続で増加。800億円超えは3ヵ月連続で、07年の水準を上回る。
一方国内も活況だ。ターボチャージャーやEV用変速機、車用リチウム電池などの自動車向けや、車載用パワー半導体、スマートフォン用高機能基盤など電子部品向けが引っ張る。世界的に需要が活況な建設機械向けも堅調。政府の投資支援策が後押しし投資意欲は中小製造業にも広がっている。
内需の10月受注額は前年同期比37.2%増の567億2300万円で、9ヵ月連続で増加した。製造業の海外投資が活発になり07年以降、内需は外需を下回るようになったが、1〜10月累計を07年と比べると約85%にまで回復している。
この一年続くフォローの風を受け工作機械メーカーは2017年度の通期業績見通しを相次いで上方修正した。
総合大手のオークマは欧米で自動車や航空機、国内で大手、中小企業の設備投資が堅調と見て連結経常利益を前期比22.2%増の見通しに。小型MCのブラザー工業は中国のIT向けがけん引し営業利益を過去最高になると予想。自動旋盤が主力のツガミは国内外で幅広く受注が伸びると見て上方修正した。
工作機械は製造業の景況の動きによる需要の増減の振れ幅が大きい。この10年では07年に過去最高の受注額となったがリーマン・ショック翌年の09年に70%減った苦い経験がある。しかし金融緩和や民間投資支援などのアベノミクス効果で自動車や電子・電機など製造業が回復。ここ数年、積極的に設備投資を展開しており、工作機械受注は安定した増加局面にある。
ただ、需要の急拡大に伴い多くの工作機械メーカーで部材調達が安定せず納期が長引きつつある。また製品開発ではIoTやロボット、AIによる自動化技術との融合も進む。工作機械は製造業を支える基幹設備。各社は製造業の競争力強化を後押しするために製品供給力や技術開発力向上に取り組んでいる。
ニュースソース:日本産機新聞(http://nihonsanki-shimbun.com/)