トーヨーエイテック、塗膜厚3―5倍のコーティング膜 PVD炉増強
トーヨーエイテックは、高張力鋼板(ハイテン)材の加工や熱間プレス(ホットスタンプ)の金型向けのコーティング膜を開発した。この膜を成膜する物理気相成長(PVD)方式の炉も本社工場に追加導入した。同社の表面処理事業は、化学気相成長(CVD)膜で首位だが、PVD膜では他社の先行を許している。PVD膜加工を成長分野に位置付けて強化する。
新しい膜「TR―Flat2」は、アルミニウムとクロムを主成分とし、膜の厚さは16マイクロ―28マイクロメートル(マイクロは100万分の1)と、従来の同社PVD膜に比べ3―5倍に厚くした。
膜の硬度は高いまま、しなやかさ(靱〈じん〉性)を高めたことで、高い負荷がかかる超ハイテン材の加工を繰り返しても摩耗や破壊しない膜に仕上げた。寿命は一般的な金型コーティング材である窒化クロムに比べ2・3倍。900度Cの高温環境下でも酸化・変質せず、ホットスタンプの金型にも使える。
軽量化のために自動車への採用が増えている超ハイテンの冷間プレス金型や、より高強度の鋼材の加工に使われる熱間プレスの金型に向けて、この膜を主力品として売り込む。
また、成膜用のPVD炉を1基、本社に導入した。自社開発した炉のため設備投資額は明らかにしていない。
これによりトーヨーエイテックのPVD炉は、自社開発のものが本社2基、東日本工場(埼玉県深谷市)で1基。他社から購入したタイプが中部日本工場(愛知県春日井市)で2基の、全5基体制となった。
需要の伸びを見て自社開発炉の増強を検討する。