住友電工、金属加工状態監視の専用ツール 工具にセンサー内蔵
住友電気工業は、金属切削加工用の工具に複数のセンサーを搭載し、加工状態をリアルタイムに監視できる「スマートツール=写真」を開発した。1年内に自社工場で実証実験を始めて加工データを収集し、データ分析のノウハウを蓄積する。第5世代通信(5G)や自家発電などの技術を盛り込むことも視野に入れる。金属部品仕上げ加工時の微細な欠損の発生を事前に防ぐなど、高度な生産管理システムとして実用化を目指す。
旋盤加工用工具のほか、複数の刃を持つ回転工具も開発している。3Dプリンターで製作した複雑形状の工具ホルダー内に振動、歪み、温度などの変化を計る複数のセンサーや電池を内蔵する。
現在は計測したデータを近距離無線通信「ブルートゥース」で転送するが、将来はより高速・大容量の通信が可能な5Gの採用も視野に入れる。ホルダー内で自家発電してセンサーや通信の電源を賄う仕組みも検討する。
スマートツールの開発は自社工場へのIoT(モノのインターネット)技術の導入やビッグデータ(大量データ)分析技術の研究開発を担当する「IoT研究開発センター」と工具事業部門が共同で取り組む。
金属表面仕上げなどの加工時に微細な欠損が発生するのを察知するために計測が必要なデータにはめどを付けているという。1年内に自社工場で実証を始めて、分析のノウハウを蓄積し、工作機械メーカーなど他社との実証も始めたい考え。
工作機械は主軸にセンサーを搭載して状態監視する手法があるが、加工対象に近い工具で計測する方が高精度に監視できるとみられる。