マツダ、新型エンジン混流生産快調 部品点数増・高精度化に対応
マツダの次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブX」。ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの“いいとこ取り”とも言える新しい燃焼方式を実現した意欲作だ。宇品工場西地区(広島市南区)の組み立てラインでは、従来型ガソリンエンジンとの混流生産が始まっている。
宇品工場に3本あるエンジン組み立てラインの一つ「ELライン」。スカイアクティブX(以下X)はここで、ガソリンエンジンの「スカイアクティブG(以下G)」や「L型エンジン」という従来型エンジンと混流生産されている。
Xが従来型エンジンと違うのは、部品点数の多さと、要求される精度の高さだ。
まず部品は、従来のガソリンエンジンから大まかにいって三つ増えると説明されている。高圧燃料噴射装置と筒内圧力センサー、そして「高応答エアサプライ」と呼ぶスーパーチャージャーだ。
三つだけ増えるとなると簡単そうだが、実際の組み立て現場ではそうはいかない。遮音や断熱などの機能部品も加わって、Xの部品点数はGに比べ74%増加するという。
これに伴い、組み立てに要する総時間は42分長くなる。協働ロボットや自動化設備の導入により12分を短縮するものの、やはり30分は長くかかる。
この30分の作業をこなすため、Xだけを迂回(うかい)させて流す「バイパスライン」を設けた。バイパスラインでは組み付ける部品一式をキット化して作業者の手元に自動搬送する仕組みや組み付ける部品やエンジンが旋回する治具を新たに採用し、作業性を高めている。
一方、高精度が求められるのは、一通り主要部品を組み立てた上で作り出される燃焼室の容積や形状が、燃焼の性能にダイレクトに影響するからだ。Xの圧縮比は16・3。ガソリンエンジンでは世界最高とされる。これを実現するため、Xのピストンの上死点位置の許容幅は、Gに比べ54%縮めたという。
主要部品のカギとなる寸法、すなわちコンロッドの長さやピストンの高さ、クランクシャフトの半径は、いずれも公差をスカイアクティブ以前のエンジンに比べ半減させた。
当然ながら前工程の機械加工にも高精度とバラつきのなさが求められたが、既存の加工機に各種のセンサーをうまく組み合わせることで実現した。
生産現場にも数多くの技術革新が求められた新エンジン。ただし、前評判として指摘されるのが価格の高さ。搭載する「マツダ3」の価格は、同じ排気量2000ccのGに比べ、Xは67万円高い。製品の値付けはコストだけで決まるものでもなかろうが、生産現場にも一層、コスト低減の努力が求められるのは間違いない。