工作機械各社 脱クルマで離陸
日本の工作機械各社がタイで成長市場だった自動車以外の分野へ大きくかじを切っている。タイは、自動車部品を削る工作機械の需要地として期待が高かった。ただ、自動車の生産台数は近年低水準。2018年は5年ぶりに年間200万台を超えたが、19年は業界予想を下方修正し、かろうじて200万台の見込みだ。自動車産業が集積している様から「東洋のデトロイト」と称された姿がかすむ。各社、人の介在を少なく複雑加工ができる5軸加工機で市場が立ち上がってきた航空機市場をめがけて切り込む。(2回連載)
タイ・バンコクで開催された東南アジア最大級の金属加工技術展「METALEX(メタレックス)2019」。工作機械各社の出展エリアに、ひときわ大きい5軸加工機が展示された。ジェイテクトのブースだ。最大加工物振り約1200ミリメートル、同1500キログラムの加工対象物(ワーク)を搭載できる。航空機のエンジンケースなど大寸法部品を想定する。18年の前回は台湾製の値頃な工作機械を、同じブース正面の“一等地”に置いていた。
ジェイテクトが出品した大型の5軸加工機
トヨタ自動車系の同社にとって、タイ法人は日系自動車関連大手のトランスプラント(海外現地生産工場)対応という性格が強く、自力で現地顧客の開拓を進めることは最優先事項でなかった。
ただ、タイの自動車産業の不振が長引き、同時に「世界の自動車エンジン向けの生産設備の需要が、かつての成長カーブを描くとはもう考えにくい」(加藤伸仁常務)と業界の大変革期に、航空機産業の開拓を決めた。
タイは航空機エンジンの修理・整備(MRO)拠点の育成を政策で進める。東南アジアでMRO産業のあるシンガポール、マレーシアに部品を納めるタイ企業も出てきた。現状、航空機部品の加工会社は少ないが、「産業が興りつつある」。
DMG森精機は自動車向けのほか、新たに航空機、半導体産業の需要を取り込む。成長を担うのは、世界的に普及を進めている5軸加工機だ。メタレックスでは出品した全6台のうち、4台を5軸加工機が占める。複雑形状で高い精度の部品を、人手をかけずに加工できる事から、労働力不足が課題のタイで有効とみる。