工作機械、中堅・中小苦しく 部品遅れ国内生産停滞
新型コロナウイルスの影響が工作機械中堅・中小の国内事業に波及している。中国事業は現地生産が「春節から稼働できず再開の予定もはっきりしない」と生産休止・一部稼働が相次ぐ。
国内事業は、生産面で中国部品の納期遅れ、営業面では展示会の中止などで販売機会の逸失、海外顧客の来日中止による出荷延期など多方面にわたる。
「2月に立ち会いのために来日予定だった台湾の顧客が、日本に来られなくなった」。工具研削盤大手の牧野フライス精機の清水大介社長はそう明かす。台湾は、日本への渡航警戒レベルを引き上げ。台湾顧客の来日が見送りとなって出荷ができず、売り上げが立たない状態だ。FUJIは工作機械やチップマウンターのいずれも、国内での立ち会いを「原則、お断りしている」と、厳格に対処する道を選んだ。
商談会、式典の中止も相次いでいる。高松機械工業は、3月と4月に出展するはずだった機械商社主催の展示会がいずれも中止。「今後の受注に影響しないか心配だ」と営業担当者は打ち明ける。エンシュウは2月24日に予定していた創業100周年の記念式典を中止。ユーザーら250人以上を招く予定だったが「安全を最優先した」と中止した。
一方、国内生産への影響も広がる。紀和マシナリーは、鋳物部品のほぼ全量を海外に頼る。調達先は機種別に中国や台湾、韓国など。うち中国製の鋳物は納期が1、2カ月伸びており、該当する工作機械の生産に支障が出ている。「新たな木型の製作にも時間がかかり、中国以外での代替生産も難しい。待つしかない」と困惑する。ニイガタマシンテクノも「鋳物の納期にめどがたたない」。鋳物は専用木型で転注は難しい。当面しのげる在庫量はあるが、この状況が続けば、量産に向かずコスト高になりうる「フルモールド鋳造法」への変更を、安定確保のため視野に入れる。しかし、コスト上昇分の価格転嫁は「難しい」のが実情だ。
アジア、米国などが日本への渡航警戒レベルをさらに引き上げれば、事業環境は難しさを増しそうだ。日本、世界の製造業は前例のない事態に直面している。