機械業界、中国減速を懸念 工作機械は反転「後ずれ」
新型コロナウイルス感染症の拡散に収束の兆しはなく、日本の機械業界にも影響を及ぼしている。工作機械業界は市況底打ちの時期が当初見込みより後ずれし、建設機械業界は中国の交通・物流網の完全復旧が見通せない中、市況停滞の長期化を懸念する。ロボット業界と造船・重機業界は現時点で大きな影響はないが、先行きは見通しにくい。中国経済減速への懸念は各業界で共通している。
工作機械業界では当初、2019年からの低調な市況が今春には底打ちすると指摘されていた。ところが新型コロナウイルスの感染拡大が販売、生産の両面に影響するようになった。日本工作機械工業会(日工会)の飯村幸生会長は、反転時期が「(当初見通しから)3カ月ほど後ろにずれるだろう」と、7月以降に遠ざかる可能性を指摘する。
各社は感染抑止措置として出張自粛、商談会の延期・中止などの策を打つ。4月に予定した中国の大型見本市も延期が決まった。営業の機会が制限されただけでなく、海外顧客が来日を危険視し、受注した製品をメーカーが引き渡せない事例も出てきた。生産面では、調達難の中国部品もあるようだ。
ロボット業界は現時点で受注に大きな影響はないが、中国での営業に制約がある。人の移動制限に加え、生産ラインに組み込むロボットを遠隔の顧客にテレビ会議で提案することも難しく「今後の業績への影響は見通せていない」。
日本ロボット工業会は1―3月期の統計をまだ公表していないが「2月までの状況で感染症の大きな影響はみられない」という。中国生産しているロボットメーカーはフル操業でないが工場の稼働を再開している。20年度事業は見通しにくいが、今回の感染が中国企業に省人化・自動化を促す契機になり得る。
建設機械業界は、最も新品が売れる春節(旧正月)明けの売り上げが例年より低迷する見込みだ。交通網や物流が完全回復しない中、今後は市況停滞が長期化することが懸念される。
コマツは2月末から一部車体の生産を、日立建機が同月20日から製缶構造物の出荷など一部の業務限定で操業を再開した。ただ部品調達の課題があり、コマツは自社や協力企業の中国工場で生産する部品をタイやベトナム、日本の協力企業で代替生産する準備を進めている。現状は中国や他国での在庫品でカバーできているという。
造船・重機業界は、感染による影響は現時点で軽微だが、今後に懸念を示す。三菱重工業は中国地域統括会社と、ガスタービンやフォークリフトの販売会社の業務が2月10日に再開。「業績に与える影響は軽微と考えるが、今後の動向を注視する必要がある」と話す。住友重機械工業は油圧シャベルなどを手がける中国国内拠点の従業員出社率が7割程度の状況。自動車向けターボチャージャーを手がけるIHIは「中国工場は平常通り稼働している」が「今後の影響が心配だ」と話す。
一方、造船業界では中国の造船所の一部が稼働制限を受けている影響で、修繕船の注文は相次いでいる。