海外工作機械「回復に数年」 デジタル活用で苦境打開
新型コロナウイルス感染症の脅威の中、日本同様に欧米やアジアの主要国・地域の工作機械業界も奮闘している。各国・地域の業界団体によると、2020年の受注額や生産額はおおむね前年比20―30%減で推移する見通し。21年は好転を予想する向きが多いが「コロナ禍前の水準に戻るには数年かかる」との指摘もある。営業活動の制約など困難が続くが、デジタル技術の活用をはじめとした創意工夫で乗り越える構えだ。
米国製造技術工業協会(AMT)は20年の工作機械(金属切削・鍛圧)生産額が前年比23%減と予想する。ドイツ工作機械工業会(VDW)は20年の受注が同28%減と見込む。新型コロナ感染がいち早く収束した中国市場は回復が早く、中国工作機械工具工業協会(CMTBA)によると3月以降は月を追うごとに改善した。
21年の市況は各国・地域とも一定程度回復する見通しだが、スイスのSWISSMEM工業会は「少なくとも2年間は18年の水準に戻らない」とみる。過去の景気の谷とコロナ禍で決定的に異なるのは人々の移動が制限された点だ。新たな制約に対処するためデジタル技術の活用が進む。AMTによると「サービス要員が出張できない際に顧客を支援するためのAR(拡張現実)の使用が劇的に増加した」という。重要な商談の場である展示会のオンライン対応も進む。
オンライン展はいつでもどこでも、好きな時間にアクセスできる利点がある一方、VDWは「『オンライン疲れ』に関する個別の報告がある」とし、「目新しさの効果が消え、多くの人は再び直接会うことを喜んでいる」と指摘する。今は「アフターコロナ」に向けた過渡期。リアルとオンラインを調和させ、顧客満足度をどう最大化するかが今後の業界共通の課題となりそうだ。