造船・重機の通期見通し、売上高戻らず 損益悪化には歯止め
造船・重機大手5社が2022年3月期連結業績予想を公表し、売上高は新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準には戻らない見通しだ。三菱重工業や川崎重工業は主力の航空機分野の低迷が続くのが影響する。ただ損益の悪化には歯止めがかかり、大幅な増益や黒字化の予想が目立つ。業績の本格回復には、成長事業が必要だ。
受注高もコロナ禍前の水準に届かない見込み。打撃が大きい航空機のほか、造船の市況低迷も業績の足かせで、各社は回復の決め手を欠いている。
22年3月期に三菱重工は航空・防衛・宇宙部門の売上高が前期比約15%減、川重も航空宇宙システム部門の売上高が同約10%減の落ち込みを予想する。川重の山本克也副社長は「民間向けは機体、エンジンともに需要が低下しており、エンジンの収益改善が一番の課題」と説明する。一方、IHIはエンジンのスペアパーツの販売が一定程度増える見込みだが、需要回復に伴う利益面への寄与は織り込んでいない。
21年3月期に減損損失の計上が相次いだ造船の構造転換も課題だ。住友重機械工業は船価の低迷を踏まえ、新造船の建造体制を年間3隻に縮小する。
コロナ禍で収益の柱だった事業がつまづき、各社は活路を見いだそうと模索が続く。IHIの井手博社長は「成長事業の具体化が課題」と指摘する。「脱炭素化」への対応により業績回復の明暗が分かれる可能性もある。