工作機械、部品不足再び 半導体・ボールネジ調達難
工作機械業界で部品・部材不足に対する懸念が強まっている。受注回復が続く中、既に一部メーカーでは半導体やボールネジなどの不足の影響が顕在化し始めた。工作機械業界はこれまでも好況時に部品の調達難に直面してきた経緯がある。製造業の生産活動が活発化し、工作機械にもより短納期が求められる中、状況次第では受注環境にも水を差しかねない。
「半導体の確保は日に日に状況が悪くなっている」。芝浦機械の坂元繁友社長は苦い表情を浮かべる。部品の調達難などによるコスト上昇を2022年3月期の業績予想に一定程度折り込んでいるが「どれほどの影響が出るかは見通しづらい」という。
オークマは問題なく調達でき、納期遅れはない状況。ただ、コンピューター数値制御(CNC)装置を自社生産するため、半導体の需給逼迫はリスクだ。被膜に樹脂を使うコネクターの品不足と合わせ、「今後を見極める」考えだ。
半導体以外の部品や部材でも不透明感が漂う。ある中堅メーカーは直近の発注分から、従来2カ月程度だった直動機器やボールネジの納期が3―4カ月に延びると調達先から告げられた。「このままでは今後の受注分は納期を延ばさざるを得ない」と危惧する。碌々産業は足元で生産への影響はないが、海藤満社長は「次の生産計画の分については(発注先から)『納期が苦しくなる』と予防線を張られている」と吐露する。
工作機械業界では、受注が過去最高を更新した17―18年にも直動機器などの基幹部品不足が発生。今回は中国を中心に市場が急回復し、メーカーからの発注が急増した。加えて「新型コロナウイルス変異株の感染拡大によるロックダウン(都市封鎖)などで部材の生産が遅れている」事情もあるようだ。
ただ、業界では3―4年前の事態を契機に「調達スタッフが調達ルートの開拓などを進めてきたことで体制は強化されている」(ソディック)という企業もあり、部品不足の影響は一部にとどまっているとの見方もある。
受注環境は好調を持続。日本工作機械工業会(日工会)によると、5月の受注実績(確報値)は前年同月比2・4倍の1239億3600万円と7カ月連続の増加となった。1200億円を上回るのは3カ月連続で「好調といっていいレベル」だ。
部品が手に入らずに機械の生産・出荷に遅れが生じれば、回復基調に影を落としかねない。大手工作機械メーカー幹部は「今は短納期が受注への大きなアドバンテージとなっている。(部品不足による納期遅れで)競合に案件を取られる可能性もある」と指摘。22年3月期も旺盛な需要が見込まれる中、調達対応の巧拙が一層重要性を帯びている。