機械・工具商社、食品市場を深耕 ロボ・自動化ライン提案
機械・工具商社各社が食品業界の市場深耕を進めている。協働ロボットや自動化ラインを、自動化ニーズの高まる食品工場向けに提案する。各社とも、営業活動の範囲を従来の機械・自動車製造業主体から食品業界まで広げ、事業成長につなげる狙いだ。提案に独自の付加価値を乗せるなど、食品市場で次の一手を打つ。
山善は食品業界向けの自動化提案を加速させる。6月に「FOOMA JAPAN(国際食品工業展)」に初出展した。食品業界に同社の認知度を広めるのが狙いで、今後、生産現場の自動化を推進する専任組織のトータル・ファクトリー・ソリューション(TFS)支社が中心となり、協働ロボットなどを食品業界に提案する。
同社は食品業界での市場開拓を起点に、三品業界(食品・化粧品・医薬品)での事業拡大を狙う。同業界で、数年後に年間売上高約30億円を目指す。
ユアサ商事は2018年4月に、物流業界と食品業界を担当する組織「物流トータルソリューション部」を設立し、食品工場の自動化に注力している。同社は従来、食品メーカー向けに少数グループで提案する形式だったのを、物流グループと合わせることで、顧客層や自動化ソリューションの幅を拡大。これにより、21年3月期の食品業界向け売上高は21億円と、同組織発足前の18年3月期に比べ約3億円増えた。
椿本興業は強みである産業資材を組み合わせた自動化提案を食品業界向けに進める。協働ロボットのほかに、三角ティーパック包装機などの充填包装機と生分解性フィルムを、環境負荷低減パッケージとし提案。後工程の個包装機なども同時に提案し、食品工場の自動化・省人化を促す。
10月に経営統合するフルサト工業とマルカも一丸となり、食品業界での事業成長を目指す。マルカは食品の無人化ラインなどを取り扱う。6月の決算説明会で、フルサト工業の古里龍平社長は「コロナ禍で食品業界が安定した業界だと知った」と話し、マルカとのシナジーを生かした同業界での事業拡大に意欲を見せる。
日本食品機械工業会によると、20年の食品機械の販売額はコロナ禍の「巣ごもり」に伴う内食化に関連した設備需要が伸び、前年比2・7%増の5860億円とプラスを確保した。労働人口の減少や新型コロナウイルス感染症拡大を背景に、自動化・省人化のニーズは高まる。
一方で、食品業界は自動車業界などと比べて、生産を人に頼る部分が多く、自動化やデジタル化が遅れているとの指摘もある。各社とも食品業界への攻略をビジネスチャンスと捉え、提案を加速していく。