工作機械受注急伸 好材料とリスク混在
長く低迷していた受注がコロナ禍でさらなる打撃を被った2020年から一転、21年の工作機械市場は回復傾向が鮮明となり、受注も高水準に達した。ただ、半導体や電装品などの部品不足の影響で、機械の納期が徐々に長期化。材料・輸送費用なども高騰を続け、好況ぶりとともにリスクも顕在化した1年となった。
「世界中で不調な地域を探すのが難しいというくらい全般的にマーケットは好調だ」。日本工作機械工業会(日工会)の稲葉善治会長(ファナック会長)は、工作機械の需要が高水準を続ける現状についてこう説明する。
日工会がまとめた工作機械受注実績は、10月まで12カ月連続で前年同月比プラスを持続。9月と10月は2カ月連続で1400億円を上回る好調ぶりだ。これまで受注回復のけん引役だった中国向けが、パソコンやスマートフォン需要の減少で春以降は伸びが鈍化しているものの、欧米を中心に先進国市場での需要が本格化。日本市場も半導体製造装置をはじめ幅広い産業で需要が伸びており、政府の補助金の効果も受注を押し上げた。
一方、深刻さが増しているのが春ごろからの部品不足の影響だ。半導体や電装部品、鋼材など「ありとあらゆるものの確保に各社が苦労している」(稲葉会長)状況で、機械の納期も延び始めている。顧客が機械を複数社に発注し、納期優先で1社に選ぶ事態も起きているという。ある工作機械メーカー首脳は「当社より納期が短い他社の機械を選ばれることもある」と話す。
受注は今後も当面、高水準が続くとの見方が強い。稲葉会長は「この勢いが急に失速するとは思えない」と期待する。市場の好況を背景にメーカー各社の受注残は着実に積み上がっている。DMG森精機の森雅彦社長は「受注残をいかにスムーズに売り上げにつなげていくかが今年、来年の大きな課題だ」と話す。部品不足やコスト増への対応の巧拙が、各社の成長に向けた重要なカギとなる。