造船・重機大手5社の通期、円安の恩恵 2社が上方修正
造船・重機大手が円安進行の恩恵を受ける。5社のうち川崎重工業とIHIが、2023年3月期連結業績予想を前提為替レートを見直して上方修正した。一方で22年4―6月期連結決算は、経済回復途上のサプライチェーン(供給網)混乱などの影響が根強い。各社は値上げなどでマイナス要因を打ち消そうとしている。
川重は前提為替レートを5円円安の1ドル=125円に変更し、5月の従来予想に対し売上高を100億円、事業利益と当期利益を30億円上方修正した。2輪・4輪車や航空宇宙で円安効果が出る。
一方で各事業での原材料や輸送費高騰の影響が大きく、2輪・4輪車を中心とした値上げで打ち消せない。油圧機器の中国市場減速も響く。山本克也副社長は「円安で輸出は追い風だがコストアップや物流費高騰にも効くので、それぞれが打ち消し合っての上方修正だ」と分析する。
IHIは15円円安の1ドル=130円に変更し、売上高を500億円、営業利益と当期利益を100億円上方修正した。ただ、航空機エンジンのスペアパーツのリージョナルジェット向け販売減での50億円の減益要因も織り込んだ。航空会社の人手不足で運航数が増えないのが原因だ。
3社は前提為替レートを維持し、通期予想を据え置いた。三菱重工業は4―6月期に材料費や輸送費高騰・半導体不足が110億円の事業減益要因になった。フォークリフトなどは現状の受注は値上げ前のもので、「下期になれば値上げしたものが受注できる」とみる。
住友重機械工業は通期について「円安効果はあるがサプライチェーン制約で売り上げが抑制される」と見通す。三井E&Sホールディングスは舶用エンジンなど機械の受注が好調だが、通期予想は維持した。