2018年度工具生産額、過去最高となる 初の5000億円超え達成へ
日本機械工具工業会は、平成31年新年賀詞交歓会を開催し、牛島会長は挨拶で、2018年度工具生産額について「通年で初の5000億円超えを達成したい」と話した。併せて、今年6月下旬にドイツのミュンヘンで開催される、3年に一度のWCTC(世界切削工具会議)への参加も呼び掛けた。
挨拶に立った牛島会長は同工業会の現況について、生産実績が2018年4~11月の8か月の累計で3467億円(前年同期比8・9%増)、出荷額は3542億円(同9・7%増)、うち内需が同9・2%増、輸出が同10・8%増、輸出比率が約35%となったことなどを説明し、「内需、外需共に伸びており、一見好調です。しかし受注については、会員各社の間で若干の温度差があるかと思いますが、11月以降、中国、台湾、韓国等ではスマホ関連の減退もあって、ひと頃の勢いはなくなっているのではないかと思われます。半面、業界全体で9月以降は生産が出荷を上回るようになっており、在庫品の充足率が上がり、供給体制が強化されてきたものと推測されます。昨年10月に見直した2018年度生産額見通しは5210億円。12月を入れてあと4か月で、1743億円を生産する必要があり、前年同期比でプラス6・3%以上伸ばす必要がある。昨年の今頃はすでにかなり高い実績だったので、この数字は実感として少し高いハードルかも知れませんが、3月までの年度通年で初の5000億円超えを是非達成したい」と述べた。
今後の見通しについては「これが非常に難しい。国内、米州、東欧は堅調が続いていますが、これから春先にかけて、米中貿易休戦の後にどうなるのか、また日米の貿易交渉はどうなるのか、英国ブレグジットがどうなるのか、この3つの要素だけでも大変大きな影響が出かねません。米国金利や株価の動向によっては円高に振れるリスクが大きいのに不安があります。また、日本工作機械工業会が発表されているように、工作機械の受注は中国向け輸出の急減で2019年は1兆6000億円程度としています。2017年が1兆6455億円で、2018年の見通しが1兆8000億円なので、2年連続で最高を更新してきたものの、ここで10%以上後戻りするだろうという見立てであります。しかし、工作機械は注残が8500億円あり、しかも生産能力は概ね1兆5000億円程度と言われているので、この2019年の1兆6000億円の受注でも生産能力を上回る数字ということになります。工作機械は依然繁忙が続くという見通しですし、ロボット関係も2018年の年間受注額が1兆円を超える見込みが発表され、1兆円産業になります。構造的な人手不足による省力投資のニーズは依然強い状況で、コネクテッドインダストリーズを実現するためにも、ロボットやセンサーの導入と機械加工が伴う投資の動きは、当業界が伸びる余地が大きい。主力の自動車は、今後もますます需要の拡大があると思います。電動化による電子部品等の部品点数と、それに伴う車体重量増を抑制するための部品の非鉄化、軽量化、それからエンジンの燃焼効率改善のための新部品等、加工する対象は増加しています。航空機や建機もあり、各社切磋琢磨して新用途を開拓してまいりましょう」と話した。
また、昨年は地震、台風の発生により各地で多くの被害に見舞われたことを踏まえ「ビジネスを進めていくうえで、BCP(事業継続計画)について各社色々考えられていると思いますが、日本はこの100年間、関東大震災以降奇数の年に大災害や国難に見舞われる大戦争に巻き込まれたという実態があります。関東大震災、伊勢湾台風、阪神淡路大震災はいずれも亥年。用心するに越したことはないので、各社ともその辺は滞りなく準備をされていると思いますが、BCP対応に力を入れて取り組んでいただきたい」と促した。
最後に牛島会長は、「本年6月下旬に3年に一度の世界切削工具会議WCTCがドイツ・ミュンヘンで開催されます。皆様も是非ご視察いただければと思います」と呼び掛け、挨拶を締めくくった。
ニュースソース:名古屋機工新聞(http://www.kikou.co.jp/)