半導体製造装置各社、5G・DC向け需要増
新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界景気が急速に悪化する中、半導体製造装置各社は2020年度業績に強気の見方を維持している。背景にあるのは第5世代通信(5G)やデータセンター(DC)向け半導体の需要増に対応した半導体メーカーなどの旺盛な投資意欲。米国による中国への経済制裁強化の動きも装置各社は冷静に受け止める声が多い。一方、新型コロナ問題の収束が長引けば、半導体メーカーの投資意欲に水を差しかねない。
東京エレクトロンは4月末、新型コロナの影響が見通せず、21年3月期業績予想を未定とした。それでも、DCと5Gスマートフォン向け半導体の需要は旺盛で、半導体前工程製造装置市場ではロジック、ファウンドリー、メモリー需要も回復していると説明。「現状では顧客の投資計画に大きな変更はない」と強気の見方を示した。
SCREENホールディングスも21年3月期業績予想を未定としたが、半導体製造装置事業は20年1―3月期の受注高が624億円と、前の四半期(19年10―12月期)比37・7%増えており、底堅い需要が続く見通し。特に台湾向けは好調で「ファウンドリーとロジックは強いまま推移する。新型コロナ影響で(オンラインでの活動が増え)サーバー需要も逼迫(ひっぱく)しつつあるようで期待したい」という。
実際、ファウンドリー世界最大手の台湾TSMCは24年に米国アリゾナ州で半導体前工程の新工場を稼働すると発表。21―29年に約1兆3000億円を投資する。国内ではキオクシアホールディングスが三重県四日市市でNAND型フラッシュメモリーの新製造棟の建設を始めた。
リスクの一つは米国による中国への新たな経済制裁だ。米国はファーウェイなど中国企業に対して米国由来の技術を使った半導体製品を供給する際には、米商務省の許可が必要とする制裁強化策を発表。これを受け、TSMCがファーウェイからの新規受注を停止したと報じられるなど業界に動揺が広がった。
それでも米半導体製造装置大手のアプライドマテリアルズは、大きな影響は受けないとの見方を表明。TSMCも製造装置が規制対象に含まれないとの見解で、ファーウェイへの供給を続ける方針を示した。
また仮にファーウェイの発注が減っても、ノキアやエリクソンなど欧州の通信機器メーカーからの受注が増えれば、ファウンドリーの生産はやがて回復するとの見方もある。
一方、新型コロナ感染症は不安要素として残る。問題の長期化で「経済への影響が深刻化し、電子機器需要やプラットフォーマーの広告料収入が減少すると、半導体需要や設備投資意欲が減衰する可能性もある」とレポートで指摘する。
情勢の変化を注視し続ける必要がある。