金型メーカー、広がる5軸MC次々導入
金型メーカーがマシニングセンタ(MC)による5軸加工を導入する動きが広がっている。障壁だった加工精度やプログラム作成の手間といった課題が改善しているためだ。
日本の金型は自動車業界の回復を背景に経営環境が好転している。しかしリーマン・ショックでの苦い経験や海外流出など先行きへの危機感が強い。これまで踏み込めていなかった新分野の加工技術を、競争力強化の起爆剤にしたい考えだ。
愛知県にあるヘッドランプの金型メーカーは今年、5軸MCを新たに1台導入した。5軸加工はかねてから取り入れており、担当者は「ノウハウと5軸の特性を生かし金型の生産性を一段と高めたい」と話す。
5軸はテーブルや主軸を傾けてワークを加工する。深いリブや立壁などで工具を短く保持することで加工時に振動が起きにくい。また周速の速い工具の刃の曲面を使えるため時間あたりの加工量を増やせる。
ヘッドランプの金型など深くて複雑な形状の加工に適しており、主にこうしたプラスチック金型の分野で採用されてきたが、最近はプレス型や鍛造型などでも導入が進む。5軸加工用CAMを手掛けるソフトメーカーの営業課長は「出荷する全体の20%が金型向け」と話す。
導入が進む原動力となっているのが、5軸MCやNCプログラム作成ソフト(CAM)の進化だ。昨月開かれた金型加工技術展インターモールド2018では工作機械やソフトメーカーが最新の5軸MCやCAMを披露した。
ヤマザキマザックは同展に11年振りに出展し、左右対称の門型構造やベース・コラムにミネラルキャストを採用したハイエンド機「UD‐400/5X」を出品。牧野フライス製作所は高性能機「D200Z」による同時5軸で加工効率を高める方法を提案した。
一方、CAMメーカーのオープン・マインド・テクノロジーズ・ジャパンは5軸加工用CAMの新型「hyper MILL V2018.1」を披露。菅井晃社長は「5軸導入が進むのはCAMの操作性が向上したことも大きい。変換機能でオペレーターは3軸の感覚で5軸加工データを作成できる」。
日本の金型メーカーは近年、業績が回復している。工業統計によるとリーマン・ショックの翌年、生産額は30%減少(1兆1590億円)したが、自動車の回復を受け14年に80%の水準(1兆3424億円)に回復。
その一方で08年に9741社あった企業数は14年に7820社に。金型の需要回復に対し企業数が減り、1社あたりの生産額がこの30年で最高水準に迫っている。
しかし、「いつリーマンのような不況が起きるかわからない」(プラ型メーカー)と未来を楽観する見方は少ない。ある機械商社の営業部長は「日本の金型は海外との競争がより強いられる。5軸加工の活用などで生産性を高めて競争力を高めないといけない」。
ニュースソース:日本産機新聞(http://nihonsanki-shimbun.com/)