国内乗用車7社の通期見通し 4社が上方修正
国内乗用車メーカー7社の業績が新型コロナウイルスによる最悪期から回復傾向にある。4社が2021年3月期連結業績予想を上方修正した。7―9月期では新車需要の持ち直しなどで、4―6月期と比べ全社が営業利益を拡大、または営業損益の赤字幅を縮小した。21年3月期は全需の縮小が見込まれる中、収益力や魅力的な商品の投入が各社の業績を左右しそうだ。
「4―9月を二つに分けると、後半の7―9月はかなり前期に比べ回復した」。トヨタ自動車の近健太執行役員は20年4―9月期連結決算をこう振り返る。4―6月期は世界販売が前年同期比5割落ち込む中、営業利益は139億円の黒字を確保し、底力を示した。7―9月期も世界販売が同2割減少したが、営業利益は5060億円に急増した。
その要因の一例として豊田章男社長は「ラインが止まっている時にこそできる仕事もある」と指摘。現場の社員が需要の回復に備え、4―5月の工場停止期間を利用し、1日当たり最大約50台増産するため生産ラインスピードの4秒短縮を実現。その後の急な増産では人を増やさずに対応するなど、地道な取り組みの積み重ねにより需要の回復局面をとらえて収益拡大につなげた。
ホンダは中国を中心に販売を回復したが、4―9月期の4輪車の世界販売は前年同期比2割減少するなど厳しさが続いた。一方、強い事業基盤構築のため「全ての領域で抜本的に事業活動の見直しを行った」(倉石誠司副社長)。その結果、一般管理費の抑制やコストダウン効果などで約2000億円の利益改善を実現。4輪事業の営業損益は4―6月期の1958億円の赤字から、7―9月期は1253億円の黒字に転換するなど、高い収益力を示した。
構造改革に取り組む日産自動車は4―6月に販売減の影響を吸収できず収益が悪化した。7―9月期は規模より利益を重視した販売を継続する中、世界販売を4―6月期と比べ64・1%増の106万台(前年同期比16・9%減)に回復した。一方、生産能力削減などで固定費を着実に圧縮し、営業損益の赤字幅を縮小。内田誠社長は23年度までの構造改革計画を「一切の妥協なく進めていくことに変わりはない」と意気込みを示した。マツダは世界販売が4―6月期の前年同期比3割減から、7―9月期は同1割減に改善。藤本哲也常務執行役員は7―9月期では米国などで販売機会を着実に取り込む一方、固定費の抑制を加速して、「業績は想定以上に改善した」と評価した。