乗用車7社の通期見通し、全社増収
乗用車メーカー7社は2023年3月期連結業績予想で全社が増収を見込む。値引き販売の抑制や為替の円安効果が収益を押し上げ、7社合計の売上高見通しはコロナ禍前の19年3月期を上回る。一方、原材料費価格の高騰が利益を大きく押し下げ、当期増益予想はホンダなど3社にとどまる。急激なコスト上昇は1年間の改善努力で補うことは難しく、負担や利益を中長期で分かち合うサプライチェーン(供給網)の構築が求められる。
23年3月期は米国や中国を中心に前期を上回る需要が見込まれ、各社が多くの受注残を抱える。前期は減産が相次いだが、要因となった半導体など部品不足の影響は継続。全7社が増加を見込む世界販売台数の実現には安定生産が課題になる。
販売規模が小さいSUBARU(スバル)は部品の共用を進めるが、半導体の影響が複数車種に広がる一因となった。汎用性の高い半導体に切り替えるなど対策を推進。中村知美社長は23年3月期の世界生産計画で前期比37・6%増となる「100万台にチャレンジしたい」と強い意志を示した。スズキも半導体関連の部品調達で契約期間の長期化や在庫の積み増しなど対策を徹底。鈴木俊宏社長は23年3月期に約310万台を見込む生産計画を「最低台数として取り組みたい」とした。
ウクライナ情勢などで、鋼材やアルミニウムを中心とした原材料や物流費の上昇が続く。トヨタ自動車は23年3月期に資材高騰の影響が営業利益を1兆4500億円押し下げると見込む。22年3月期にも過去最大の6400億円のマイナス影響があったが、2倍以上に膨らむ原材料価格の上昇傾向に近健太副社長は「過去に例がないレベル」と警戒する。
ホンダも営業利益で2期続けて3000億円近いマイナス影響を見込む。前期は値下げの原資となる販売奨励金の抑制、原価改善、部品サプライヤーへのコストダウン要請などで影響を抑えた。ただ2年連続で原材料価格の急騰を1年間の原価改善努力で打ち返すのは難しく、竹内弘平副社長は「サプライヤーと協力しながらコストの上昇を押さえ込む努力を続ける」とした。
一方、記録的な原材料価格の上昇局面でも、商品価格への転嫁には細心の注意を払う。「カローラ」など30年以上続く車種を多く抱えるトヨタは「インフレになり価格を急に上げていては期待に添えないことになる。原価低減に長期で取り組み、お客さまの期待に応えたい」(長田准執行役員)とした。日産自動車の内田誠社長は「値上げという言葉は好きではない。車の価値を認めてもらえるかが重要だ」とし、商品力の向上に注力する。