乗用車7社の通期見通し、4社が当期益上方修正 収益性改善進む
乗用車7社の2021年4―9月期連結決算が出そろい、トヨタ自動車など4社が22年3月期連結業績予想で当期利益または当期損益を上方修正した。奨励金の抑制など販売の収益性改善や為替の円安傾向が利益を押し上げる。一方、半導体など部品不足に伴う減産で世界販売見通しの引き下げが相次ぎ、影響が大きかったホンダなど2社が当期利益を下方修正した。
営業利益や営業損益見通しではトヨタや日産自動車など3社が上方修正した。減産により業界全体で新車が不足し、販売店に支払う奨励金が下がっていることが各社の利益を押し上げる。日産は足元で米国や日本などで新型車の販売が好調に推移。「新型車に織り込んだ価値に基づいた価格設定」(アシュワニ・グプタ最高執行責任者〈COO〉)で販売の収益性を改善する。
トヨタや三菱自動車は利幅の大きいスポーツ多目的車(SUV)の販売が堅調に推移。マツダは減産影響下で「米国や豪州など販売が好調な市場への供給を優先し、リーンな在庫による収益の最大化」(藤本哲也常務執行役員)に取り組む。
為替の円安基調も各社の利益を押し上げるが、鋼材や銅などの原材料価格の高騰が利益を圧迫する。トヨタの近健太取締役は「円安の影響を除けば資材高騰などにより、実質は下方修正になる」との厳しい見方を示す。
一方、部品不足の影響で全社が22年3月期の世界販売見通しを下方修正し、期初計画と比べた減少幅は、同計画を未定としたスズキを除く6社合計で190万台を超える見込み。6社の21年3月期の世界販売実績は2063万台で、約1割が失われる計算になる。
期初計画と比べ影響が大きかったのがホンダで80万台の販売減を見込む。倉石誠司副社長は「年明けから生産が回復する見込みだが、今期中の挽回は難しい」と述べた。17万台の販売減を見込むSUBARU(スバル)の中村知美社長は「挽回のめどが立つほど半導体の供給はいまだ安定していない」とした。