乗用車7社の4―9月期、5社が減益 市場減速・円高響く
乗用車7社の2019年4―9月期連結決算が出そろい、日産自動車やホンダなど5社が減益となった。世界的な市場の減速と円高のダブルパンチに見舞われた。注力市場で底力をみせたトヨタ自動車、SUBARU(スバル)は増収増益となり明暗が分かれた。米中貿易摩擦など通商問題も横たわる厳しい事業環境は続く見通しで、トヨタを除く6社が通期見通しを下方修正した。
4―9月期の営業利益が前年同期比で約8割減となった三菱自。得意とする東南アジアのほか中国、北米、欧州など広い地域で販売が落ちた。調査会社マークラインズによると同期の自動車の世界市場は同3・2%減。三菱自の加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は「自動車業界を取り巻く経済状況は厳しい」と表情を曇らせる。
同期のマツダの世界販売台数は同8・2%減の73万1000台だったが、販売の質向上を進め単価は改善しており、「販売台数・構成」要因が営業損益を312億円押し上げた。しかし対円の為替レートは前年同期に対しドルは2円、ユーロは8円それぞれ円高に振れ、為替影響が375億円の悪化要因となり営業減益となった。
自動車の世界市場減速が鮮明化したところで、為替悪化が日本メーカーに追い打ちをかけた格好だ。
その中でトヨタは強さをみせつけた。世界販売を伸ばし、課題とする北米事業もスポーツ多目的車(SUV)「RAV4」など新車販売の好調とコスト管理徹底で利益を伸ばし、全体の当期純利益は中間期として過去最高だった。
各社が、それぞれの注力市場で販売を維持・向上できたかどうかも業績を読み解くポイントだ。スバルは主力の米国販売が同11・3%増の33万6000台と伸びて増収増益。ホンダは減収減益となったものの米中市場での販売は堅調で底力をのぞかせた。一方、東南アジアを主力とする三菱自のほか、スズキは稼ぎ頭のインドで販売を落とし4割の営業減益に沈んだ。
市場低迷、為替の円高傾向は継続する見通し。また景気減速の誘因となる米中貿易摩擦も懸念材料となる中、トヨタを除く6社が通期予想を下方修正した。
スズキは10月に当期利益予想を前期比21・7%減の1400億円に見直した。同11・9%増の2000億円としていた従来予想から一転、2ケタ減益となる。今後のインド市場について「慎重にみないといけない」とし、建設中の新工場の稼働を延期する。トヨタも「インド、インドネシア、タイで市場縮小傾向になる」と認識し販売台数予想は下方修正した。
事業環境に加え、電動化など次世代技術投資がかさみ各社ともに収益悪化のプレッシャーを受ける。トヨタは原価改善をさらに徹底する。三菱自は開発モデルの絞り込みや、人員削減を含む事業構造改革に取り組む方針を示した。