トヨタなど乗用車7社の4―9月期、5社増収4社営業増益
乗用車7社の2018年4―9月期連結決算が8日までに出そろい、トヨタ自動車やスズキなど5社が増収、4社が営業増益となった。得意市場での販売増やコスト削減努力が寄与した。一方、販売が落ち込んだ日産自動車、西日本豪雨の影響を受けたマツダ、品質問題に揺れるSUBARU(スバル)は営業減益。足元では世界市場の減速、為替、米国を中心とする通商問題といった課題が横たわる。各社の経営トップの緊張感は高まっている。(後藤信之)
8日、18年4―9月期連結決算を発表した日産は米国、欧州の両市場の販売が落ち込んだほか、為替の円高も響いた。目下の最大課題である米国事業は販売の質向上を進め、「在庫は適正化した。引き続きインセンティブ(販売奨励金)抑制に取り組む」(軽部博日産最高財務責任者〈CFO〉)とした。
一方、トヨタは強さを見せつけた。18年4―9月期連結の営業利益は前年同期比15・1%増の1兆2618億円。為替変動が200億円のマイナス要因だったが、アジア、欧州を中心とする販売増など営業面の努力(プラス要因1500億円)や原価改善努力(同300億円)で補った。19年3月期見通しを上方修正し、売上高は過去最高を見込む。
ただ4―9月期で北米、その他地域では営業利益が減少しており、「(販売は)地域別では五分五分」と小林耕士トヨタ副社長は厳しい表情をみせる。
ホンダは主力スポーツ多目的車(SUV)の不具合で中国販売が苦戦したが、堅調な日本と北米での販売と2輪車事業の好調で補った。三菱自動車は主力地域とする東南アジアが大幅に伸び、全社の売上高、営業利益が前年同期比2ケタの増となった。ただ19年3月期予想は据え置いた。同社の益子修最高経営責任者(CEO)は「多様なリスクがある」と指摘する。
自動車業界共通のリスクは米中の2大自動車市場の減速だ。中国の新車販売市場は9月まで3カ月連続で前年割れで、通年でのマイナスが現実味を帯びる。マツダは19年3月期の中国販売が前期比8・8%減の29万4000台に落ち込む見通し。
また米国の金利上昇の副作用で、新興国での通貨安リスクが高まる。4―9月期は2ケタの営業増益を達成したスズキだが、7―9月期に限ると営業減益。インドルピー安が一つの要因で、長尾正彦常務役員は「減速決算」と総括した。
米トランプ政権の保護主義的な通商政策の影響も見逃せない。米国での鉄鋼・アルミニウムへの追加関税の副次効果もあり原材料費が上がっている。また、中国との貿易摩擦をめぐっては「長引けば景気を冷やし新車市場にも悪影響を及ぼす」(自動車メーカー幹部)との懸念が広がっている。
企業単体ではコントロールできないリスクが顕在化し、先行きの不透明感が高まっている。益子三菱自CEOは「浮かれず、原点に帰り、無駄排除など当社ができることをしっかりやる」と気を引き締める。