乗用車7社の通期見通し、6社増収 新車販売増見据え
乗用車7社の業績が新型コロナウイルス感染拡大の影響から回復傾向にある。2022年3月期連結業績予想で6社が増収を見込む。世界で新車販売の増加を織り込む。トヨタ自動車とホンダは販売台数でコロナ前の20年3月期を上回る。経営再建中の日産自動車は回復が鈍く、営業損益ゼロの見通し。半導体不足、原材料価格高騰、コロナ感染再拡大といった不安材料もあり、挽回生産などモノづくりの力も試される。
「日本、北米、欧州、中国は想定より早く回復してきている」。トヨタの近健太執行役員は主要市場の動向をこう見る。同社は22年3月期のグループ世界販売台数を前期比6・4%増と予想。全地域で計画する販売増が、収益を押し上げる。
21年3月期に唯一営業増益を確保したホンダ。過去最高の販売台数を更新し業績をけん引した中国市場について倉石誠司副社長は「4月も大変好調」とし、22年3月期は前期を上回る販売を見込む。
北米では日産が22年3月期の販売台数を同17・1%増としたが、コロナ前の水準には届かない見通し。同社は米国で販売奨励金に頼らない改革を断行。アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は販売の「量から質にシフトしている」と話す。
先行き最も懸念されるのが半導体不足。22年3月期に日産は約25万台、三菱自動車は約4万台の減産、マツダは約7万台の出荷減影響を見込む。トヨタの近執行役員は「大きな影響は見通していないが予断を許さない状況」と、生産計画にリスクを織り込む。
一方、ホンダとSUBARU(スバル)は上期中心に減産を見込むが、期中の増産で半導体の影響を相殺する計画。スバルは労働組合との話し合いを含め柔軟な生産シフトを検討し、中村知美社長は前期比約3割増の生産計画を「何とかやりきりたい」とする。
インドでは足元で新型コロナの感染拡大が深刻化し、スズキは22年3月期の明確な生産計画を示すのが難しいとした。加えて半導体影響やロジウムなど原材料価格の上昇もあり、「しっかり見極めるための時間を持ちたい」(長尾正彦取締役専務役員)と業績予想を未定とした。挽回生産や材料価格上昇を打ち消す原価低減など、部品メーカーを含めた供給網全体の底力が求められている。