工作機械、落ち込み大きく 8月受注も900億円割れ
日本の工作機械産業が停滞局面にある。日本工作機械工業会は、2019年の工作機械受注見通しを1兆2500億円(年初予想は1兆6000億円)に下方修正した。過去最高だった18年の1兆8157億円から、ほぼ5カ月分相当の受注量を失うことになる。飯村幸生日工会会長は年初、19年の工作機械産業を「山から次の山へ、尾根伝いに歩いている」と表したが、その勾配は想定以上に急だった。
日工会が同日発表した8月の受注額(確報値)は、市場の冷え込みを証明するのに十分な数字が並んだ。
全体額の884億円は、13年4月以来76カ月ぶりの900億円割れ、外需の509億円は16年10月以来34カ月ぶりの600億円割れだ。ほかにも内需の自動車向けが75カ月ぶりの90億円割れ、外需の米国が31カ月ぶりの160億円割れだ。政府の「ものづくり補助金」も「効果が目立たなかった」と需要の起爆剤としては、限定的なものだった。
停滞ムードは日本の工作機械産業だけでなく、米国、欧州、中国も同じだ。関係者は、「欧州の工業会は欧州全域の回復に1―2年要するとみている」と明かす。過去最高だった18年から失速とも言える状況を生んだのは米中貿易摩擦だ。さらに中国の設備過剰が新規投資を抑え込んでいるようだ。
日工会は8月の受注を底に、9月単月の受注額を950億円とするなど年内は健全水準の1000億円割れが続くと予想する。
こうした予想が成立する点は、一気に年間受注額が4000億円規模に沈んだ08年のリーマン・ショック後の09年との違いであり、「当時と異なり、今回は変化に対して調整が効く」ことが救いだろう。
そもそも工作機械の受注は数年単位で好不調を繰り返すものだ。業界には「短期的な上下動に一喜一憂しても仕方ない」(関係者)との考えが根強い。中長期の開発に経営資源を回し、成果を出す工作機械産業ではその考えが正解だろう。
日工会は市場の回復が20年4―6月に始まるとみている。各国の景気刺激策、半導体関連の在庫調整からの投資再開、第5世代通信(5G)向けの設備投資を予想する。
回復時期がいつになるにせよ、次の高みに向けた仕込みを滞りなく進める必要がある。ましてや今は変化の時代だ。