AIで機械部品の異常を予測 THK“ドカ停”防ぎ設備効率向上
THKは人工知能(AI)を活用して機械要素部品や工具の状態を診断するIoT(モノのインターネット)サービス「OMNIedge(オムニエッジ)」を展開している。部品が壊れる前に状態異常を検知して機械ユーザーに知らせる仕組みによって、「ドカ停(長時間の生産設備の停止)」などを回避できる。顧客の困りごとを解決するオムニエッジのラインアップを順次拡充することで、OEE(設備総合効率)最大化の支援という価値提供を加速する。
オムニエッジでは、診断したい部品や周辺機器に専用のセンサーを設置。エッジコンピューティングやクラウドに送られたデータをAIが即座に分析する。例えばモーターやポンプ、ファンといった回転部品の状態を診断するサービスでは振動や温度など複数の要素から、AIが部品の異常度を算出。適切なメンテナンス方法についてもリポート形式で助言する。データを取り込み学習することで進化し続けるAIが生産現場の心強い味方になるというわけだ。
オムニエッジの特徴の一つに、ユーザー側で異常検知の閾値(しきいち)設定や、抽出したデータの分析が不要な点もある。データと一言に言っても、その受け手によって捉え方は大きく変わる。勝又育秀IOTイノベーション本部ソリューション開発部部長兼データサイエンスセクション課長は「データに“スパイス”を添加し味付けをした状態で提供することで、受け手が意思決定をしやすくなる」と狙いを説明する。
オムニエッジの展開に向けてはAIの深層学習に必要な実フィールドでのデータが不足しているという課題もあった。そこでTHKの工場などで実機検証などを実施し、サービス提供につなげた。
現在、オムニエッジのラインアップは第3弾まで拡大。切削工具の欠損やチッピングを検知できる「工具監視AIソリューション」ではスタートアップのMAZINと協業するなど積極的に外部とのアライアンスも活用する。
現在、オムニエッジを採用した企業は国内だけで数百社に上り、業界も多種多様。結果、普段は直接の取引が少ない機械ユーザーとの接点が強化されるなど、ビジネス領域を深化することができた。
勝又IOTイノベーション本部ソリューション開発部部長は「今後もラストワンマイルの困りごとを解決するとがったソリューションを打ち出したい」と第4弾以降のサービス展開にも自信を示す。