超硬切削工具を長寿命化 レーザードーピングで最大20倍
名古屋工業大学とシー・ケィ・ケーは、超硬切削工具の寿命を標準品の3―20倍ほどに伸ばせる技術を共同開発した。超硬合金に微量の他元素を加えるレーザードーピング(LD)により実現した。シー・ケィ・ケーは今春をめどに同技術を用いた超硬ドリル、超硬エンドミルを発売する。価格は標準品の2倍程度になる見込みだが、長寿命化の効果によってランニングコストの大幅低減が期待される。
LDは金属材料に他元素を塗布した後、レーザーを照射して母材の性質を制御する技術。江龍修名工大理事・副学長の研究成果を、シー・ケィ・ケーが超硬工具の表面処理に応用した。超硬工具の母材となる炭化タングステン(WC)の表面の強化する層に、硬質材料で構成するドーピング材を塗布し、レーザーを照射する。
WCの強化層は照射によって原子間にすき間が生じ、そこにドーピング材が入り込む。これにより原子同士の結合力が高まり、WCの硬度が上がったり、もろさが改善したりして、長寿命化する。
同社は超硬工具の受託生産を主に手がけている。これまで自社ブランドでの工具は販売していなかったが、今回の長寿命化した超硬工具の開発を機に、自社製品の販売事業に乗り出す。
LDはドリル、エンドミルだけでなく旋削チップに対する長寿命化の効果も確認している。ただ、同社は旋削チップの生産ラインを持っていないため、市販の旋削チップにLDの加工処理する事業を販売事業とあわせて展開する考えだ。