城洋 射出成形機向けシリンダー
城洋(兵庫県姫路市、角田城治社長)は、射出成形機のシリンダー(加熱筒)を製造している。シリンダーは内部でプラスチック原料を溶かす部材。射出成形の工程で重要な役割を果たす、いわゆる心臓部分だ。光学レンズ向けなど特殊なプラスチックの射出成形機で採用されている。国内メーカーの全てが取引先だ。角田社長は、「超高級品と言われているところに使われている」と話す。
射出成形において特殊なプラスチック材料ほど、加熱すると腐食性ガスが発生しやすい。シリンダーに使用する材料部分からこだわることで、この課題に向き合っている。ニッケル合金などの粉末合金を混合し、約1000度Cで約2000気圧という高温高圧下で原料を原子レベルで結合している。「どういった種類の粉末合金を混ぜるかが、当社のノウハウの部分。強みと言える」(角田社長)という。
城洋は1965年に創業し、精密機械部品の製造を手がけてきた。現在も産業向けのほか、船舶や航空機エンジン向けなど幅広い分野に製品を納入している。潮目が変わったのは、90年代。取引先がシリンダー事業から撤退することになり、供給責任を果たす目的でその事業をそのまま譲り受けた。
角田社長は、「精密機械部品を製造している実績があるため、(シリンダー材料で使用する)難削材の加工は得意だ」と説明する。加工技術に強みがある一方、機械部品は取引先の発注を基にした仕事が中心。一方、シリンダーは自社ブランドとして、力強く売り出す。
長らく射出成形機市場は、右肩上がりの成長を見せていた。ところがこの数年、中国市場や自動車業界の景況悪化を受けて低迷しており、業界の先行きに不透明感がある。
この状況に対し角田社長は2024年、省エネルギータイプのシリンダーを開発した。自社の技術を結集して時代の変化に対応した製品を開発し、新たな市場を開拓する方針だ。