「ギガキャスト」導入へ準備着々 車部品各社、相次ぎ参入
「2024年は準備期間。25年から本格導入が始まるのでは」。車体構造を一体成形する技術「ギガキャスト」の日本での普及の時期について、複数の関係者がこう語る。電気自動車(EV)大手の米テスラが導入したことで注目され、トヨタ自動車も26年に投入予定の次世代EVでギガキャストを導入する方針を打ち出した。将来の本格導入を見据え、自動車部品関連企業がギガキャスト関連事業に新規参入する動きも進んでいる。
ギガキャストはアルミニウムダイカストでEVの車体構造を一体成形する技術。欧米や中国のEV生産で部分的に実用化が進む。テスラは約70点の部品で構成していた車体骨格部品をギガキャストにより1点に置き換え、コスト削減と車体剛性の向上につなげた。
米谷製作所は共和工業と組み、ギガキャストに必要な大型金型の提供を24年に始める予定。米谷製作所の米谷強社長はギガキャストについて「生産現場の省人化、省力化のメリットがあり、採用が進むだろう」と期待する。
コイワイは3Dプリンター技術を生かし、ギガキャスト向け砂型鋳造試作事業を始めた。ギガキャストによる量産の前段階で、砂型を用いて鋳物を試作する需要が増えると判断した。同社はエンジン用鋳物部品の試作で豊富な実績を持つが、車の電動化の進展で受注量が減少。ギガキャストの試作需要を取り込み巻き返しを狙う。リョービも25年3月に菊川工場でギガキャスト専用の新工場を稼働予定。大型のダイカストマシンや金型加工機を導入し、自動車メーカーからの試作の受注を目指す。
ソディックは日本精機と連携し、ギガキャスト向けの大型の金型部品「入れ子」を金属積層造形(AM)で作る技術の開発に取り組む。アイシンは中期経営計画でEVのボディーを一体成形するギガキャストを成長市場と位置付け、取り組みを加速する。
日系自動車メーカーでギガキャスト導入について時期まで含めて明言しているのはトヨタのみだが、態度を明らかにしていないメーカーも含め「試作はしている」と複数の関係者が明かす。一部ではギガキャストで従来通りの品質を出せるのか懐疑的な声もあるものの、多くの関係者は「導入が進むだろう」とみている。日本では安全性や品質の観点から、バッテリーパックにおけるギガキャスト採用が先行するとの見方が有力だ。
「ギガ」の名が示す通り、ギガキャストで使用する機械や金型は従来よりも大型となる。こうした大きな機械や金型をどう運ぶかや、どこに設置するかの検討も重要になる。金型を例に取ると、大型の金型を輸送する際には道路交通法の手続きなども求められ、分割輸送といった手だてを考える必要がある。そのためギガキャストを導入する工場内、もしくはその近辺に金型の設計・製作も含めた拠点の整備が必要との見方が多い。
全てを一体成形するのか、または複数の部品に分割して成形するのか、完成車メーカーの方針によっても判断や対応が分かれそうだ。分割して成形する場合は、後工程でその部品を接合するための技術も必要となり、新たな商機が生まれる可能性もある。