工具のホーニング加工を非接触・自動化 牧野フライス精機
牧野フライス精機は、切削工具の製造に必要な「ブランクの切削」「工具の研削」「工具の測定」の三つを全て手がける世界でもまれなメーカー。そのノウハウを生かして開発した精密コンピューター数値制御(CNC)工具研削盤「AGE30FX」は「世界トップの技術で人手に頼っていた工具のホーニング加工を自動化した」画期的な製品だ。
ホーニング加工とはドリルの刃先を加工し、工具の耐久性向上や長寿命化を図る手法。従来は熟練作業者による手作業に頼ってきた。このため自動化や省力化が課題となっており「皆が苦労している」という。
AGE30FXは同社の画像認識技術を用いて工具を自動測定・補正する「monocam2」に対応。ホーニング加工を世界で初めて非接触かつ自動化した。2022年の「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」で初披露した。
加工対象の工具の測定について、これまでもタッチセンサー方式で計測する技術はあるが、時間がかかる上に摩耗による部品交換などのコストが発生する。同社ではこれを画像認識で計測する技術を開発した。
タッチセンサーより高精度な計測が可能で、計測時間も半分から3分の1まで短縮できる。非接触測定のため摩耗もない。細い刃先でもセンサーの接触による刃先の欠けが起こらないなどのメリットがある。
本来、加工時の装置内は多量のクーラント液を使用するため、画像認識による計測は難しい環境にある。同社では独自技術でこうした環境下でも高精度な計測を可能にしており、「まねしようとしてもできない」と自信をみせる。
今後は刃数の多いドリルや各種エンドミルの加工など、幅広いニーズに対応していく方針。非接触・自動化を推進する上で画像認識技術を重視しており、同技術の研究開発・利活用を進める。