工作機械受注、想定外 中国、刺激策で回復
2024年の工作機械の受注環境は想定外の展開となった。景気減速が懸念された中国は政府の刺激策もあり春ごろから増加に転じた。一方、24年後半から回復が期待された自動車や半導体向けは勢いを欠いた。トランプ米次期大統領の政策が本格化する25年は期待と不安が混在し、不透明感は続きそうだ。
「中国全体はもう少し落ちると思っていた」。日本工作機械工業会(日工会)の稲葉善治会長(ファナック会長)は、11月の定例記者会見で24年の中国市場をこう振り返った。
日工会の統計によると中国の受注額は4月に前年同月比で16カ月ぶりに増加に転じ、10月まで7カ月連続でプラスを継続。中国政府による設備更新や消費財の買い替え促進策、自動車関連の継続的な投資、次世代スマートフォン関連の投資の増加などが支えた。
増加が続く中で7―9月期の受注は前四半期(4―6月期)比で減少し反動減が懸念されたが、10月の受注は前月比で4カ月ぶりに増加した。野村証券の前川健太郎リサーチアナリストらは「9月から10月にかけて、中国が落ち込むリスクは後退した」と見る。中国市場にけん引されるように日工会全体の受注も5月に17カ月ぶりに増加へと転じた。
一方、自動車産業ではハイブリッド車(HV)への回帰など、各国で電気自動車(EV)シフトを加速する開発方針への逡巡も見られ設備投資の先送りが継続。半導体も年末にかけ関連設備投資の盛り上がりが予想されたが、稲葉会長は「半年ぐらいずれている状況ではないか」と期待外れとなる見通しだ。関税強化などが懸念されるトランプ米次期政権だが、「通商政策の方向性が定まれば、様子見していた設備投資が動き出す」(工作機械幹部)との声が聞かれる。一方、別の工作機械幹部は「先行きの不透明さから受注環境は改善せず、勝ち負けが鮮明になる」と競争激化を予想する。不確実性が高まる中、サービスの拡充で収益基盤を強化するなど各社には総合力が求められる。