ファナック、CNC一新 顧客目線の使いやすさ重視
ファナックがロボットや周辺機器をはじめとする機械単体の性能追求から、人の働きやすさや工場全体の最適化までを踏まえた提案を進めている。最新のコンピューター数値制御(CNC)装置の設計を一から見直し、工作機械自体の設計段階から効率化できるように機能を見直した。ロボットの可動領域を広げる走行軸は、汎用化することで機能性を向上。人手不足で自動化が避けられない中、顧客目線でより使いやすさを重視した設計にこだわる。
ファナックはこのほど、工作機械を動かすための頭脳となるCNCを一新した。加工物の変化やエネルギー効率向上といった環境対応に加え、人手不足など工作機械市場からの要望は複雑化している。最新のCNC「シリーズ500i―A」は、直行軸と回転軸という既存の工作機械構成にとらわれずに、工作機械の軸構成を自由に定義できる。
そのため省人化や高精度化を推進する同時5軸加工機や、工程集約につながる複合加工機の設計が簡単になる。またIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、デジタル技術などを組み合わせることで、加工工程から工場全体の最適化までを考慮した。
また走行軸ではモジュール設計を採用。1―20メートルの範囲で0・5メートル刻みで調整できる。安部健一郎常務執行役員は「5メートルくらいまでのニーズが多いため、1―20メートルあればおおむねカバーできる」と語る。走行軸モジュールと延長モジュールを各3種用意し、汎用商品化した。従来溶接品だった走行軸ベースとスライダーを鋳物に置き換えることで剛性を高め、脚数を削減。設置幅を従来比約30%減に幅狭化し、輸送コンテナにも2列積載が可能になるなど輸送コスト削減も見込める。
従来はロボット周辺機器として顧客や用途に合わせて設計、販売してきたが、今回の汎用化はファナックにとってもメリットが大きい。鋳物化で大量に生産できるためだ。安部常務執行役員は「需要は増えており生産効率やコスト削減にもつながる」と語る。
ロボットの性能追求にも余念がない。幅広い産業分野で大型・重量物の搬送に活用できるパレタイジングロボットでは、可搬重量800キログラムの機種を開発した。駆動系の効率向上やアームの軽量化といった機能性だけでなく、工場で働く人のモチベーションが高まるようなデザインも追求。「動けば良いという考え方から、美しさや格好良さなどモチベーションが高まるデザインを心がけている」。
自動化ニーズは世界で高まる一方だ。人の働きやすさや工場全体の最適化までをとらえた生産性向上や現場の効率化が重視されている。