加藤研削工業、切削工具のびびり振動抑制 不等ピッチメタルソー加工
加藤研削工業は、切削工具や機械刃物の再研磨を手がける。チップソーやメタルソー、エンドミルなど対象はさまざま。中でも特徴的なのが、メタルソーの刃ピッチを不等間隔に加工することでびびり振動を減らす「不等ピッチメタルソー加工サービス」。商標登録もしており、全国有数の独自技術だ。このサービスを新規顧客には無料提供することで、顧客開拓とノウハウの蓄積につなげている。
同社は1966年に創業。木工工具の再研磨から始まり、現在は食品業界や特注家具の製造会社、機械メーカーや素材メーカーなど幅広い業界に携わる。加藤社長は「刃の材質も加工対象物(ワーク)も顧客によってまったく違う。だからこそ当社には知見がたまっている」と胸を張る。
不等ピッチメタルソー加工は、パイプの切断加工や金属部品の溝入れ加工などに用いる丸鋸状工具の刃のピッチを等間隔の状態から不等分割に変える。これにより加工時に工具から出る振動が変化し、びびり振動が起こりにくくなる。利点は多岐にわたり、バリの減少や加工音の低減、工具への負担が減ることによる工具寿命の延長も期待できる。びびり振動が発生した場合、一般的に送り速度を遅くして対応する。だが同加工ではびびりの発生自体が減るため、送り速度を従来比3―7倍上げられる。一つの工具が会社の生産能力の底上げに寄与する。
不等ピッチ加工の研究やサービス提供を始めたのは08年。当初は具体的な効果や切削条件との相性など不明な点も多かった。そこで新規顧客に対して同加工を無料で行うサービスを開始。新規顧客を獲得するとともに、フィードバックをもらうことで知見を蓄積し、現在では顧客の切削条件によって最適なピッチを提案できるまでになった。同サービスの売り上げは全体の約2割を占めるまでに成長。加藤社長は「新品の刃物より、うちで研磨してもらった方がよく切れると言われたい」とほほ笑む。
