工具各社、航空機向け攻勢 難削材加工が進化/JIMTOF2018
工具メーカー各社が航空機部品に適した工具の提案に力を入れる。自動車などに次ぐ柱にするため、従来を大きく上回る加工品質の新製品を投入する。開催中の「日本国際工作機械見本市(JIMTOF2018)」では、航空機向けをはじめとする画期的な新製品がめじろ押しだ。(特別取材班)
住友電工ハードメタル(兵庫県伊丹市)は自社で材料開発した、結合材を一切含まないバインダレス立方晶窒化ホウ素(CBN)製の工具を、航空機分野で使われるチタン合金や耐熱合金の加工用に訴求する。チタン合金を毎分150メートルの高速加工した場合、耐摩耗性は超硬工具比53倍の長寿命。チタン合金と溶着しにくく加工面をきれいに仕上げられるため、医療用人工骨の仕上げにも有効。旋削用のほか、ミーリング用の工具もそろえた。
京セラは航空機向けで工作機械大手とタイアップ展示。DMG森精機の5軸加工機に搭載したソリッドエンドミルは、アルミニウム合金製の機体部品を加工する。オークマの複合加工機に取り付ける特注ソリッドエンドミルは、ニッケル素材の耐熱合金製タービンディスクの加工用だ。
機械工具事業本部の小倉健販売促進部責任者は「航空機向け工具は顧客の要望に応じた特注品。グローバルな生産体制も強みだ」と自信を見せる。
ダイジェット工業は金型や自動車部品向けに強いが、航空機向けもランディングギアなど足回り部品で実績がある。今後はチタンなど難削材向けに、刃先交換式ボールエンドミルや肩削りカッターなど、高硬度材の荒加工や中仕上げ加工で生産性向上に貢献する。
三菱マテリアルのチタン合金仕上げ加工用バレルエンドミルは、航空機エンジン部品などの加工を想定。先端部と外周部にバレル(たる)形状を採用し、先端部で面取り加工、外周部で翼面加工といった複合加工に対応する。難削材の旋削加工用インサート(刃先交換チップ)の商品群も展示した。
また、工具の長寿命化、高効率化の提案も目立った。不二越は新ブランドの超硬汎用ドリルを披露。工具寿命が他社製品の2倍というのが特徴で、初日1日の発表会には、100人以上が詰めかけた。北山恭工具事業部長は「今までと違うレベルの売り上げを狙う」と意気込む。
タンガロイ(福島県いわき市)は次世代鋼旋削加工用化学気相成長(CVD)材種を紹介。被膜層の中の酸化アルミを厚膜化するなどの新技術により、従来品の2倍以上の耐摩耗・耐欠損性を実現した。連続から断続まで幅広い加工条件をカバーする。19年夏までに各種タイプを順次発売する。
日進工具は1日に発売した2製品が一押しだ。銅電極加工用ロングネックエンドミルはスクエアタイプ。従来のボール型に比べて2次元加工に向き、長寿命だ。アルミ専用エンドミルは、3枚刃・3倍刃長を採用して加工速度を上げた。
OSGの目玉も、19年春発売の3枚刃のドリルだ。08年に3枚刃を投入したが、スラスト抵抗が高いことが普及の課題だった。新製品は2枚刃並みに抵抗を抑えた。刃先の形状を工夫し、切り粉を丸めて排出できるのも特徴だ。2枚刃より加工時のバランスが良いという長所もあり、3枚刃時代の到来が期待される。
ニュースソース:日刊工業新聞(https://www.nikkan.co.jp/)