ノリタケ、複層砥石を拡販 電動車向け24年度実用化
ノリタケカンパニーリミテドは、自動車の電動化を見据えて研削と研磨機能を一体化した「複層タイプ」の歯車用砥石(といし)の開発・販売を強化する。静粛性や動力の伝達効率を引き上げる研磨の需要が高まっているのが背景。一つの機械・工程で研削・研磨することで生産性を高めたり、加工対象物(ワーク)脱着による加工位置の微細なズレを防いだりできる点を訴求する。2024年度に本格的な販売活動を始め、30年には同社が販売する歯車用砥石の3割が複層タイプに置き換わる想定だ。
一般的な歯車用砥石は研削のみの「単層」で、後工程として別の砥石で研磨するのが定石。一方、複層タイプは一つの砥石で研削、研磨できるため「設備を1台に集約したり、加工の精度を高めたりできる利点がある」。
ノリタケは研磨面に不織布を使った複層砥石で差別化を図る。不織布に研磨材を混ぜた「研磨布紙」と呼ぶもので「(繊維素材を使った)バフで磨くイメージ」だ。一方、競合が主力とする樹脂を使った「レジノイド砥石」は構造材が強く「研磨するには非常にシビアな設定が必要」な点が弱点という。
複層タイプの製品開発では回転速度を単層と同等に引き上げることも要となる。単層の回転速度は毎秒80メートルが一般的だが、複層は研削と研磨のバランスを保つため低速で運用せざるを得ない。だがノリタケは業界に先駆けて同75メートルまで達した。
電動化の世界では、バッテリーの電力を高効率で動力に変えることが欠かせない。加えて、高級車に求められる静粛性能が大衆車でも必要となることで「研磨の需要が高まっている」と実感を強める。
現在は自動車業界の各社と実証を重ねる段階で、24年度には実用化を目指す考えだ。将来はロボットや建設機械の静粛性向上にも研磨技術が生かされるのではないかとノリタケは推測している。研削と研磨の“二刀流”が電動化の技術開発を進展させる要石となりそうだ。