切削の振動抑制、長寿命化・高能率 自動化を支える・・・ダイジェット工業
ダイジェット工業は超硬工具の開発に力を入れている。その中で切削加工の精度を高め、自動化に貢献しているのが高送り加工用工具だ。削る際の切れ込み角度を浅くすることで工具の振動を抑え、作業能率を上げるもので、荒加工に使われる。行成伸二業務役員兼切削技術部長は「折れにくく加工精度が高い高送り加工工具は、これまで難しかった金型加工の自動化も可能にした」と胸を張る。
金属を削る際に振動はつきものだ。ただ深い角度で一気に削ると振動も大きくなり、工具の破損や加工精度の低下につながりやすい。切れ込みの大きい従来の工具は「加工途中で折れたり、精度が出ず仕上げの際に負担がかかったりする」(同)こともあった。損傷した工具を作業者が頻繁に取り換える必要があるため、金型加工の自動化が進まない要因の一つになっていた。
一方、高送り加工は工具を浅く傾けて削ることで振動を抑え、工具の長寿命化につながるため、取り換え頻度を抑えることができる。一度に削り取る量は少なくなるが、送りを速めることで従来と遜色ない時間で加工でき、金型などの切削加工の自動化に役立つ。切れ込みが浅いため熱の発生を抑える効果もあり、チタンなど熱のこもりやすい材料を削る際にも有効だという。
近年は加工能率を改善するため「インサート(交換用の刃先)を小さくして数を増やし、加工効率を上げる」(同)工具の需要が増えている。ただ「材料によっては刃数を増やすと逆に振動が出やすくなるものもある」(同)といい、材料に合わせた工具の形状や刃数の調整にノウハウが必要だ。同社は荒加工用工具だけでも140種と豊富なラインアップをそろえ、顧客の要望に応える。
電気自動車(EV)の普及に伴い「セラミックスなど軽くて硬い素材の製品が拡大しており、それに伴って高難度の加工も増えている」(同)。工具材料の研究開発から完成品の製造まで一気通貫で行う同社の強みを生かし、今後も「高度化する加工に見合った工具を開発する」意向だ。