重工業3社の通期予想、三菱重工防衛伸び IHI赤字・川重は減益
重工業大手3社の2024年3月期連結業績予想(国際会計基準)は業績の差が鮮明になった。
三菱重工業は主力のガスタービンなど幅広い事業が好調で受注高・売上高予想を上方修正。受注高は初の6兆円を見込む。一方、川崎重工業とIHIは国際共同開発に参画する航空機エンジン「PW1100G―JM」の不具合により計上済みの損失額が大きく、大幅減益や最終赤字になる。三菱重工は損失額が小さく、差を分ける一因となる。
三菱重工は通期の受注高を従来予想比4000億円増の6兆円(前期比33・3%増)に引き上げた。小沢寿人最高財務責任者(CFO)は「もう少し行くかもしれない」と上振れの可能性を示す。ガスタービンや原子力発電機器が好調な上、政府予算増により防衛が伸びている。従来の過去最高額を1兆3009億円上回る。
PW1100G―JMの不具合対応は参画シェアに応じて費用負担する仕組みで、同社はシェアが約2・3%と低いため損失額は200億円弱で済んだ。
一方で、シェアが約15%のIHIは1600億円の損失を計上し、当期損益は900億円の赤字を見込む。15年ぶりの最終赤字になる。
売上高は従来予想比300億円増としたが、各利益段階は据え置いた。ターボチャージャー(過給器)の欧州拠点の構造改革費用60億円を計上するほか、一部製品で売り上げ時期がずれ込む。福本保明財務部長は「期ずれなので事業自体に問題があるわけではない」と分析する。
川重もエンジン共同開発のシェアが約5・8%で580億円の損失を計上。事業利益は航空機エンジンの収益性改善などで従来予想比30億円上方修正したが、当期利益は為替ヘッジで評価損が発生したため据え置いた。
山本克也副社長は「為替影響がないようオペレーションしたので円安を享受できていないが、想定内の着地だ」と総括した。
2社は受注高予想を引き上げたものの、川重が同400億円増、IHIが同500億円増にとどまり、三菱重工とは増加幅に差が出る形だ。