中・小型鋳物生産の自動化に挑む 木村鋳造所・オークマ、DX化で新プロセス確立へ
木村鋳造所が産業用ロボットを活用して、工作機械の部品として用いる中・小型鋳物を完全自動で作る実証試験を群馬製作所で進めている。鋳物の納入先であるオークマの協力の下、従来手法の手込め造型において、砂型加工から注湯に至る工程を自動化する新手法を開発。各工程で一貫してデジタルデータを用いるデジタル変革(DX)や3Dプリンターでの中子製作による木型の省略といった施策も併せて推進し、画期的な成果を上げている。
実証の狙いについて木村鋳造所の木村寿利社長は語る。その取り組みの場となっている実証ラインは「造型」「加工」「型合わせ」と工程別に分かれたセルで構成。造型セルと加工セルに1台ずつ、型合わせセルに2台と計4台のロボットを配して、各工程を自動化している。
造型セルでは造型機で500ミリ角×高さ200ミリメートルの砂のブロックを作った後、従来、人がしていた砂の清掃などをロボットが実行。その後、加工セルのロボットがブロックを削って、砂型の形をかたどる。そして、砂型に中子を挿入したり、上下型の型合わせをしたりするのは型合わせセルのロボットだ。
人手による品質のバラつきを排除したことで部品の形状精度は向上。パーティングライン(上型と下型の型合わせ面の隙間・ズレによって生じる鋳物の突起)に発生するバリの除去工程も省略できる。一つの砂型上に複数種の部品を所要量に応じてレイアウトできるので、多品種少量や変種変量製品にも適応しやすいという利点もある。
中子は3Dプリンターで製造するため、木型の設計・製作は不要になった。木型の保管・管理・補修といった関連業務もなくなり、それらの省力化の効果も大きい。
また、製造に必要なデータは、納入先のオークマの部品の3Dデータから一貫で効率的に生み出す方法を編み出した。
オークマが部品の形状の3Dモデルのデジタルデータを生成。それを基に、木村鋳造所が砂型や中子に必要なデータを作って、それぞれの生産に活用する。
こうしたデジタルデータの連携での鋳造について、オークマ製造本部生産技術部の一木洋介部長は「デジタルと無縁だった鋳物の世界ががらりと変わる」と話す。
これらの施策で、既に従来の4分の1の人員での夜間・休日の連続稼働や、2週間のリードタイムの最短3日への短縮を実現しつつ、製造コストは従来と同等以下という成果が出ている。
今後は、データ連携をもとにオークマが納入後の鋳物部品の切削加工をすることで、鋳造後の切削加工工程を鋳造工程と結合させる取り組みを2023年度内に実施する予定。一層の効率化に向け、新手法にさらなる磨きをかける考えだ。