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- 2024年5月24日
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金属板の端を折り紙のように折る「ロボットヘミングシステム(RHS)」のパイオニア、トライエンジニアリング。
主力のRHSを中心にロボットによる生産・加工システムを幅広く展開するロボットシステムインテグレーションの総合メーカーだ。
現在はシステムインテグレーター(SIer)としてのロボットシステムの提案だけでなく、新しい生産工法の開発にも挑戦している。培ったロボット技術と、ロボットメーカーや周辺機器メーカー、大学、研究機関などとのネットワークを活用し、顧客の生産技術に関する開発を受託する。
生産技術は加工機やロボット、ソフトウエアまでを多角的に考える必要がある。生産技術の担当者には高度化する個々の技術の見極めとともに、それらをまとめ上げる能力が求められる。こうした中、生産技術の開発を自社だけで完結させずに外部委託を有効活用する例が増加。トライエンジニアリングの生産技術開発受託事業も「ニーズが増えている」。
ロボットシステムの多様なラインアップも同社の強みだ。金属の摩擦撹拌接合(FSW)をロボットで実現するシステムは、自動車の電動化で需要増が見込まれるアルミニウムダイカスト部品やバッテリーケースなどの接合用として提案を進めている。人手不足で技能継承が課題となっている研磨加工でも、ロボットシステムによる自動化を推進する。
現在の注力分野は穴開け・切削加工などをロボットで行う「ロボットマシニングシステム」だ。特に加工対象物(ワーク)が大型の場合、「ロボットによる加工を実現できれば、加工機よりも導入費用や設置面積を減らせる」。
ロボットを複数台設置すれば、多軸で同時に複数の加工を進められるため高効率化が可能だ。
メーカーと共同で加工用途に最適な高剛性・高精度のロボットの開発も進める。「ロボットマシニングは始まったばかり。目指すところは加工機と同レベルのスピードや精度。さらに市場を開拓する」と意気込む。
- 2024年5月24日
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- 2024年5月23日
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「2024年は準備期間。25年から本格導入が始まるのでは」。車体構造を一体成形する技術「ギガキャスト」の日本での普及の時期について、複数の関係者がこう語る。電気自動車(EV)大手の米テスラが導入したことで注目され、トヨタ自動車も26年に投入予定の次世代EVでギガキャストを導入する方針を打ち出した。将来の本格導入を見据え、自動車部品関連企業がギガキャスト関連事業に新規参入する動きも進んでいる。
ギガキャストはアルミニウムダイカストでEVの車体構造を一体成形する技術。欧米や中国のEV生産で部分的に実用化が進む。テスラは約70点の部品で構成していた車体骨格部品をギガキャストにより1点に置き換え、コスト削減と車体剛性の向上につなげた。
米谷製作所は共和工業と組み、ギガキャストに必要な大型金型の提供を24年に始める予定。米谷製作所の米谷強社長はギガキャストについて「生産現場の省人化、省力化のメリットがあり、採用が進むだろう」と期待する。
コイワイは3Dプリンター技術を生かし、ギガキャスト向け砂型鋳造試作事業を始めた。ギガキャストによる量産の前段階で、砂型を用いて鋳物を試作する需要が増えると判断した。同社はエンジン用鋳物部品の試作で豊富な実績を持つが、車の電動化の進展で受注量が減少。ギガキャストの試作需要を取り込み巻き返しを狙う。リョービも25年3月に菊川工場でギガキャスト専用の新工場を稼働予定。大型のダイカストマシンや金型加工機を導入し、自動車メーカーからの試作の受注を目指す。
ソディックは日本精機と連携し、ギガキャスト向けの大型の金型部品「入れ子」を金属積層造形(AM)で作る技術の開発に取り組む。アイシンは中期経営計画でEVのボディーを一体成形するギガキャストを成長市場と位置付け、取り組みを加速する。
日系自動車メーカーでギガキャスト導入について時期まで含めて明言しているのはトヨタのみだが、態度を明らかにしていないメーカーも含め「試作はしている」と複数の関係者が明かす。一部ではギガキャストで従来通りの品質を出せるのか懐疑的な声もあるものの、多くの関係者は「導入が進むだろう」とみている。日本では安全性や品質の観点から、バッテリーパックにおけるギガキャスト採用が先行するとの見方が有力だ。
「ギガ」の名が示す通り、ギガキャストで使用する機械や金型は従来よりも大型となる。こうした大きな機械や金型をどう運ぶかや、どこに設置するかの検討も重要になる。金型を例に取ると、大型の金型を輸送する際には道路交通法の手続きなども求められ、分割輸送といった手だてを考える必要がある。そのためギガキャストを導入する工場内、もしくはその近辺に金型の設計・製作も含めた拠点の整備が必要との見方が多い。
全てを一体成形するのか、または複数の部品に分割して成形するのか、完成車メーカーの方針によっても判断や対応が分かれそうだ。分割して成形する場合は、後工程でその部品を接合するための技術も必要となり、新たな商機が生まれる可能性もある。
- 2024年5月23日
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- 2024年5月21日
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ガリューは、生産ラインに対応するエアブローノズル「ラインブラスター」シリーズを刷新して発売した。回転するチューブの素材を見直し、低圧でも回転しやすくして耐久性も高めた。除塵や水切り、乾燥などの用途を想定する。
低圧、標準タイプでそれぞれ可動範囲ごとに3種類のノズルを用意し、計6種類をそろえた。使用圧力は低圧タイプが0・25メガ―0・4メガパスカル(メガは100万)、標準タイプが0・4メガ―0・6メガパスカル。
チューブの素材は従来のソフトポリウレタンから、耐久性が高いエンジニアリングプラスチックに変更。しなやかさが上がり、低圧でも回転しやすい。耐久時間は従来比5割増の4500時間に伸びた。
同シリーズは円筒形ノズルにチューブを挿入した構造。チューブはエアコンプレッサーの圧力でノズル内部を回転し、広範囲にエアを叩きつけながら噴射する。使用圧力0・5メガパスカルで毎分約3000回転する。一方向に噴射する平型ノズルに比べて洗浄効率が良い。
- 2024年5月21日
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- 2024年5月20日
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キラ・コーポレーションは、難削材加工機「グラインディングセンターGCV―30」用に自動芯出し機能を開発し、オプションとして提供を始めた。
タッチプローブやカメラシステムなどを用いて、加工対象物(ワーク)とインデックスユニットの中心のズレを補正し、大径ワークの芯出し作業を簡素化した。半導体回路を形成するエッチング装置に使う静電チャックなどの外周の面取り加工向けに提案する。
自動芯出し機能はタッチプローブと電荷結合素子(CCD)カメラシステムでワークをセットした位置を測定するとともに、レーザー測定システムで工具の長さと径を計測。インデックスユニットとワークの中心のズレ分を求め、極座標補間で加工する。加工終了後はCCDカメラで検査測定する。
機械ストロークよりも大きいサイズのワーク加工が可能。Y軸移動量400ミリメートルに対して直径500ミリメートルのワークに対応する。
同加工機はタッチプローブとレーザー測定システムを標準装備しており、インデックスユニットとCCDカメラがオプション設定となる。
主なワークはエッチング装置に使う静電チャック、フォーカスリング、シャワープレートを想定する。これらの部品加工は芯出し作業に長時間を要しており、効率化が課題となっている。
半導体ウエハーは今後、さらに大型化が進むと予想されている。同機能の活用を通じて生産性向上を提案し、半導体分野で同加工機の拡販につなげる。
- 2024年5月20日
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- 2024年5月17日
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工作機械各社が加工機のサブスクリプション(定額制)サービスを提供する動きが広がっている。ソディックは月額で放電加工機を利用できるサービスを始めた。契約期間は最短1年から選択できる。エンシュウはみずほリースと組み、月額でマシニングセンター(MC)のサブスクを展開している。初期費用を抑えて生産性の高い工作機械を導入しやすくし、急な需要の変動やモノづくりの変化に柔軟に対応できるようにする。
ソディックがこのほど始めたサブスクサービス「サブスク TRY(トライ)」は、航空機部品や金型加工向けのワイヤ放電加工機2機種が対象。契約期間は1、3、4、5年から選択できる。月額利用料には消耗品の交換を含めた年1回のメンテナンスや、事故に備えた動産総合保険の費用も含めた。
同社ワイヤ放電加工機のエントリーモデル「VN400Q」の場合、月額19万円から利用できる。契約終了時に延長か返却を選択する。工作機械のリース契約は一般的に7年以上とされるが、契約期間を複数設定することで利便性を高めた。
同社幹部は「新機種を短期間で使い続けたい、または仕事の先行きが不透明で投資判断が難しいといったお客さまのニーズに応えたい」としている。今後は2機種以外にもサブスクでの品ぞろえの拡充を予定する。
エンシュウが2022年に始めたMCのサブスクでは、加工プログラムの説明や実習を通じて導入を支援する教育サービスなども無料で提供する。
また岡本工作機械製作所も20年に研削盤で月額のサブスクを始めている。契約には油圧油の交換やといし軸(スピンドル)の振れの調整といったメーカーが保証する無償点検サービスなどを含めた。
製造業ではデジタル変革(DX)で開発期間が短縮するほか、脱炭素に向け電気自動車(EV)シフトが進むなど大きな変化が起きている。一方、急な市場の変化への対応が常に求められ、工作機械の性能の進化もデジタル技術の進展で加速している。各社はサブスクの投入で工作機械導入の選択肢を増やし、モノづくりの潮目の変化に対応しやすくすることで、受注機会の拡大につなげる。
ただ業界関係者からは「サブスクの認知度がまだ高くなく訴求できるかがポイント」との指摘もある。対象機種や関連サービスの拡充でサブスクが浸透するのか注目される。
- 2024年5月17日
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- 2024年5月15日
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日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表した4月の車名別新車販売によると、ホンダの軽自動車「N―BOX(エヌボックス)」が前年同月比0・3%減の1万4947台で9カ月連続の首位を維持した。認証不正問題が影響し2月以降、上位30位圏外となっていたダイハツ工業は軽「ミラ」が同39・4%減の3360台で26位に浮上。同社は7日、約4カ月半ぶりに国内全ての工場が稼働し、今後の台数増が見込まれる。
2位は1月に一部改良があったトヨタ自動車の小型車「ヤリス」、3位には4月にセダンなどの一部改良があったトヨタ「カローラ」が入った。ホンダのコンパクトスポーツ多目的車(SUV)「ヴェゼル」は前年同月比2・6倍と大幅増。スズキの軽「ハスラー」や、トヨタの高級ミニバン「アルファード」も伸長した。
一方、3月に6位で、2023年度通年でも7位と人気が高いトヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」は、4月にリコール(無料の回収・修理)を届け出た影響などもあり、同43・2%減の4452台と大きく減少した。
23年度通年で5位と人気車種だったダイハツの軽「タント」は同84・4%減の1866台で、4月も30位圏外だった。4月10日に生産を再開したタントよりも先に、2月26日に生産再開したミラが30位圏内に入った。ダイハツは既に全車種の受注を再開。生産についても軽「ムーヴキャンバス」と小型車「ロッキー」のHVを除いて再開している。
- 2024年5月15日
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- 2024年5月8日
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日進工具はアルミニウム加工用の3枚刃3倍刃長のラジアスエンドミル「アルミ用高能率ラジアスエンドミルAL3D―345R」を発売した。高速送りでもびびり振動を抑制し、高能率加工を実現する。外径2ミリ―12ミリメートルで39サイズを展開する。消費税抜きの標準価格は7700円から。
特殊な刃形状によりびびり振動を抑制した。加工負荷の大きいコーナー部や高速条件でも安定した加工が行える。
切りくずをスムーズに排出する大きなチップポケットなど、底刃形状の工夫により突っ込み加工から、溝加工の連続加工が可能。2枚刃3倍刃長を採用した同社従来製品と比べ1・5倍の高送りができ、加工時間の短縮にも貢献する。
- 2024年5月8日
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- 2024年5月7日
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ジーベックテクノロジーの「XEBECバリレス面取りカッター」が話題だ。金属加工でバリの出ない面取り加工を実現し、2023年に“産業界のアカデミー賞”と言われるドイツの「ベスト・オブ・インダストリー・アワード2023」を受賞した。
同カッターは同社が世界で初めて開発したV字型切れ刃。切り口が三つある刃が4枚付きで、加工段階からバリを限りなくゼロに近づける。高い耐久性も特徴で21年の発売以来、航空機用のチタンやインコネルなど固い金属の加工で評価されてきた。加工対象物によりサイズやコーティングも使い分けられる。
同社は世界48カ国にパートナー企業がある。その販売網を生かし「国内含めニーズのある場所に製品を提供する」方針だ。
- 2024年5月7日
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- 2024年5月2日
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富士通がデジタル技術を活用したモノづくり支援の取り組みを強化する。製造現場での作業手順や設備の動作を仮想空間でシミュレーションできるツール「COLMINA(コルミナ)VPS GP4」と、仮想現実(VR)システム「同 Xphere(クロスフィア)」を刷新し発売した。デジタル空間上の表現力を高め、シミュレーション機能を強化した点が特徴だ。最新版2種を含むVPSシリーズで今後3年の間に2500ライセンスの販売を目指す。
VPSシリーズは電機・精密や工作機械、半導体製造装置、自動車、鉄道などで1072社に7063ライセンスが採用された実績を持つ。最新版2種の価格はGP4が400万円から(消費税抜き)、クロスフィアが320万円から(同)。
GP4は工場の設備や人の動きを3次元(3D)のデジタル空間に再現して、工程検討を行うツール。これまでは設計データなどを基に再現していた。最新版ではレーザーによるスキャン技術によって壁や柱などの実際の物体をデータとして取り込む機能を追加し、現実に近いシミュレーションを可能にした。
さらに生産ラインの作業者同士の衝突を防ぐ干渉チェック機能も強化。人と人がぶつかった部分をマーカーで表示し、ぶつかった回数や時間帯も記録することで、作業品質を評価しやすくした。
- 2024年5月2日
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- 2024年5月1日
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タンガロイは、内径奥端面の深溝入れ加工用工具向けに新シリーズ「フェイス・ミニ・カット」を発売した。最小端面加工径10ミリメートル、最大溝深さ9ミリメートルに対応する。消費税込みの標準価格はインサート(刃先交換工具)の主な型番「MFGR10―200―020 SH7025」が8151円。
インサートに物理気相成長(PVD)コーティング材種「SH7025」を採用。切削力を大きな支持部厚みで受けるなど、設計の工夫で高いインサートクランプ剛性を実現した。びびりを抑え、端面の深溝入れで安定した加工が可能となる。
独自の2段形状のチップブレーカーでは切りくずの流出を横方向に制御し、工具への絡みつきなどによる機械停止時間を削減する。2カ所からの内部給油機構で刃先近傍に切削油を確実に供給。切りくず排出性と安定した長寿命化が見込める。ホルダーのシャンク径は12ミリ―16ミリメートルを設定。自動盤から一般旋盤に対応する。
- 2024年5月1日
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- 2024年4月30日
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三菱電機はファイバーレーザー加工機の旗艦機種「GX―Fシリーズ」に、窒素と安価なエアを混合したアシストガスを用いる軟鋼向けの新切断方式「AGR―Mix」などの新技術を開発した。同機種のオプションとして設定するほか、既存の購入者には有償で機能追加をする。同シリーズは購入済みの製品に後付けできる新技術を毎年、投入することを掲げている。
AGR―Mixは窒素ガスのみの切断に比べ加工品質を高めつつ、同等の加工速度を実現する。窒素ガス消費量を最大60%削減できるため、ランニングコストも低減できるという。
このほか、ジョイントの切り離しの手間を大幅に減らす「ライトジョイント」や、加工パラメーターの編集機能を拡張する新技術も提供する。
自動シートチェンジシステム「FOTシリーズ」も投入。素材を1枚ずつ加工機にローディングし、加工後は加工品・端材ともに製品棚に移して、素材供給から加工材搬出までの連続運転を実現する。工場の形に合わせて設置の方向を、幅方向を短くする「I型」や長手方向を短くする「L型」から選択できる。
- 2024年4月30日
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- 2024年4月26日
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中村留精密工業は、同社が独自に開発した旋盤のアイドルタイム(待機時間)を短縮する機能「クロノカット」を、国内向けではほぼすべてとなる合計23機種に標準搭載する。5月の出荷分から搭載する。生産効率向上を実現する同機能の搭載機種を拡充し、受注拡大につなげる。
クロノカットは2023年10月に発売した精密コンピューター数値制御(CNC)複合旋盤「WY―100V=写真」に初搭載し、主軸の同期、リジッドタップや原点復帰の高速化などを実現した。さらにパーツキャッチャーにより加工対象物(ワーク)の取り出し時間を短縮することで、サイクルタイムやリードタイムを低減させ、生産効率を高めた。
一方で加工条件は変わらないため、精度への影響はない。加工事例として油圧バルブ品の場合、加工時間を30%短縮できたという。
- 2024年4月26日
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- 2024年4月24日
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ニデックマシンツールは、遊星歯車機構などの内歯車を高精度に仕上げる量産用ポリッシュ(研磨)加工法を開発した。
同加工法は外歯車向けでは確立されているが、内歯車向けは世界初という。従来の研削やホーニング、スカイビングといった加工法では得られなかった精度を実現し、歯車の耐久性や伝達効率などの向上につなげられる。今夏の実用化を目指す。
新開発の加工法は独アーヘン工科大学との共同研究の成果の一部で、同社の量産用内歯車研削盤「ZI20A」を使用した。
同研削盤は歯車の歯から歯へと連続的にかみ合いながら軸方向に砥石(といし)を動かす独自の仕上げ加工法を搭載。この加工機と加工技術を基に、砥石の回転数や加工時間などの加工条件を導き出し、外歯車ポリッシュ加工法と同等の精度を内歯車で実現した。
遊星歯車機構は自動車の駆動ユニットや変速機、ロボットの関節部分などに使われている。構成部品の歯車にわずかな歪みがあると耐久性や伝達効率に影響し、騒音や振動が起こる要因となる。このため、高品質な歯車が求められる。
- 2024年4月24日